研究実績の概要 |
Reynolds数が増加するほど,初期値鋭敏性が増加し,系の自由度も増加する.発達乱流に潜む数値解の検出の困難さは,乱流が本質的に持つ複雑さによるだろう.Couette乱流の軌道不安定性を調べたところ,不安定性の増幅率(Lyapunov指数)は概ねKolmogorovスケーリングに従うこと,不安定な構造(Lyapunovベクトル)は小スケールの剪断構造に起因することが分かった.本結果は日本物理学会(春季大会)で発表した.さらに,国際学会ICTAM2024(韓国)で口頭発表予定である.本件は論文執筆中である. 数値解の探索ではNavier-Stokes方程式のJacobianの反復計算を行う.系の自由度の増大による高い計算コストは数値解の探索における重大な問題である.コスト緩和のために静的SmagorinskyモデルによるLES系での数値解探索を考察したが,十分な緩和にならなかった.ところで,軌道不安定性解析でも,Navier-Stokes方程式のJacobianを繰り返し解く.我々の軌道不安定性解析の結果から,Jacobianの反復計算による数値解の探索が実行可能な壁摩擦Reynolds数が200程度であると見積もった. 定常外力によって駆動される回転球面上の流れについて,帯状流が形成するパラメータを同定した.帯状流が発現する要因となる数値解の探索を行う. LES系におけるCouette乱流の動力学を記述する不安定周期解の軌道不安定性を調べ,小スケールの剪断構造が不安定性に寄与することを明らかにした.国際学会ETC18,Statphys28,AJKFED2023で発表した.本件は論文執筆中である.
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