本年度は主として、多孔質媒質中の部分混和系粘性フィンガリングのパターンを解明するとともに、完全混和系、非混和系、部分混和系と溶液の混和度を変えることによるフィンガーパターンの違いを明らかにすることを目的として本研究を行った。この研究では、半径方向に制限された形状において、多孔質媒質を模倣した2-D micromodelを用いて低粘性流体で高粘性流体を置換する実験を行った。その結果部分混和系流体では、粘性の低い溶液から高い溶液に向かうKorteweg力によって、フィンガーパターンから液滴パターンへの変化が促進され、それに伴い置換の様子も変化することが観察された。そして、置換の様子は主に①相分離時に現れ対流を誘起する体積力、いわゆるKorteweg力の大きさと方向、および②液滴が流路に詰まることによって生じる毛細管圧力、という2つの要因が組み合わさり、決定することが明らかとなった。 またPEG-硫酸マグネシウム-水系の部分混和系VF実験も行った。従来の硫酸ナトリウムを用いたものと同様、液滴が発生するパターンが見られた。硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウムともに、注入流量を大きくすると、液滴生成は抑制された。また、濃度を低くすると液滴生成は抑制され、通常のVFパターンを示し、さらに低濃度では指の先端がとがったVFパターンが得られた。硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウムともにこの傾向がみられたが、同濃度では硫酸マグネシウムのほうがより高濃度で硫酸ナトリウムで得られた結果に似たパターンが得られた。すなわち、部分混和系では濃度に差はあるものの見られる現象やその背景にある理論は基本的に同じであると推察できる。
|