研究課題/領域番号 |
22K03905
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
堀口 祐憲 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 准教授 (60314837)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | キャビテーション / 動特性 / 単独翼 / インデューサ |
研究実績の概要 |
流体輸送システムでは、その中核を担うターボポンプや水車で生じた、キャビティと呼ばれる蒸気泡が原因となって、キャビテーションサージと呼ばれる激しい流量変動現象が生じる場合がある。この発生には、圧力変動や流量変動に対するキャビティの体積の時間変化率、すなわちキャビティの動特性が強く影響する。信頼性の高い流体輸送システムの実現のためには、キャビティの動特性の解明と理解が必要とされている。 そこで、本研究では、キャビティの動特性を体系的に理解することを大目標に定め、例としてロケット用ターボポンプインデューサを取り上げ、(1)ターボ機械の適用範囲の拡大を目指した、幅広い流量範囲における動特性の系統的解明、(2)動特性の設計への活用に向けた、動特性と流れの関係の解明、及び(3)流体輸送システムの安定性判別法の確立のための、キャビテーションサージの発生条件式の検証に取り組んでいる。 2022年度の研究では、単独翼に生じる翼端漏れ渦キャビティを詳細に観察し、流量変動を模擬した迎え角変動の周波数の増加に伴って、キャビティの変動の位相遅れが90度に漸近することを確認した。他方、キャビティが無い場合の翼端流れ場のPIVによる観察から、翼端漏れ流れが迎え角の変動に対して位相遅れ無く応答することを明らかにした。これらの結果から、翼端漏れ渦キャビテーションの応答性は、キャビティに大きく影響を受けていることが示された。 2023年度は、より詳細なパラメータスタディを行うことを目的として研究を進めた。具体的には、実験装置を改良して、より精度よくデータを取得できる環境を整えた。2024年度には、鋭意データを取得する予定にしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度には、単独翼に生じる翼端漏れ渦キャビテーションの実験結果を詳細に観察、分析することにより、前述のように、「迎え角変動に対するキャビティの変動の位相遅れが90度に漸近する」という知見と、「翼端漏れ渦キャビテーションの応答性は、キャビティに大きく影響を受ける」という知見が得られた。また、2023年度には、実験装置を改良して、より精度よくデータを取得できる環境を整え、2022年度に得られた知見を補強するようなパラメータスタディを可能とした。これまでに得られた知見や今後得られる知見は、2024年度に取り組む予定にしている、「インデューサの動特性と流れ場の関係の解明」等に役立つ重要な知見となっている。 一方、このように単独翼に生じる翼端漏れ渦キャビテーションの動特性と流れ場関係の解明に取り組んだため、当初予定していた、幅広い流量におけるインデューサの動特性の計測と解明の計画に遅れが生じている。 また、実験に使用しているキャビテーションタンネルの劣化(配管系の酸化)により、作動流体である水への錆の混入が目立ち、実験を能率的に繰り返せない状況にある。このため、研究計画には余裕を持たせていたが、その余裕はなくなりつつあり、時間的にタイトになってきている。 全体としては、やや遅れている状況にあると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
能率的に研究を遂行できるよう、必要な予算を別途確保し、キャビテーションタンネルの大規模な改修を行っているところである。2024年度の半ばまでには改修が完了する予定であり、その後鋭意データを取得する。水質が良好に維持された環境下では、より精度が安定したデータの取得が可能になるものと期待している。
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次年度使用額が生じた理由 |
キャビテーションタンネルの劣化などにより、実験計画がやや遅れていることが主な理由である。2024年度の半ばには改修が完了するので、その頃にはすべての必要物品を手配する。
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