研究課題/領域番号 |
22K03913
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研究機関 | 岐阜工業高等専門学校 |
研究代表者 |
片峯 英次 岐阜工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (00224452)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 最適設計 / 形状最適化 / 形状同定 / 流体構造連成 / 有限要素法 / 随伴変数法 |
研究実績の概要 |
本研究では,申請者がこれまでに取り組んできた熱弾性場や熱対流場等の連成場に対する形状最適化をさらに発展させ,流体構造連成問題における形状最適化の解法を提案し,その妥当性を検証することを目的とした.2022年度の主な研究実績は次の通りである.
1. 流体構造連成問題における最も基本的な問題として,流れ場中の幾何学的非線形性を考慮した構造領域に対する剛性最大化問題を取り上げた.定常流中に置かれた構造体の変形に基づいた評価関数として平均コンプライアンスを定義し,その評価関数を最小化する形状決定問題の解法を提案し,数値解析例を通じてその解法の妥当性を検討した.具体的には,上記の形状最適化問題を定式化して,随伴変数法を使用して形状修正のための分布系感度関数を理論的に導出し,その感度関数に基づいて形状更新を行う数値解析法を提案した.またFreeFEMを利用した解析プログラムの開発を行い,簡単な数値解析結果によって提案した数値解析法の妥当性を確認した.さらにその研究成果を口頭発表した.
2. 弾性壁を有する内部流路問題に対して,流体の粘性に基づく散逸エネルギーを最小化する流路形状決定問題を取り上げた.上記の手順と同様に,形状最適化問題を定式化して,形状修正のための分布系感度関数を理論的に導出した.解析プログラムの開発を行い,簡単な数値解析例によって提案した数値解析法の妥当性を確認して,その研究成果を口頭発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度から令和7年度の4年間において,具体的な問題として, (1) 流れ場中の幾何学的非線形性を考慮した構造領域に対する剛性最大化問題,(2) 弾性壁を有する内部流路問題に対して,流体の粘性に基づく全流体領域の散逸エネルギーを最小化する流路形状決定問題,(3) 弾性壁を有する内部流路の部分領域において流速を制御する流路形状決定問題,(4) 上記 (2) の内部流路問題に対して,散逸エネルギー最小化と弾性壁の剛性最大化を目的とする多目的形状最適化,(5) 上記 (2) の内部流路問題に対して,散逸エネルギー最小化と部分領域において流速を制御する多目的形状最適化,(6) さらに上記 (1)から(5) の定常問題を非定常問題へ拡張した形状決定問題を取り上げ,問題の定式化,形状修正のための感度関数の理論的導出,およびその感度関数を用いた数値解析を行って,提案する解法の妥当性について検証することを目的としている.
これまでに,上記(1),(2) の形状決定問題に対して,問題の定式化を行い,随伴変数法を使用して形状修正のための分布系感度関数を理論的に導出した.その後, 解法のアルゴリズムを提案した.実際の解析手順は,感度関数を評価するための通常の流体構造連成場解析,随伴弾性場解析(あるいは随伴流れ場解析),および形状修正解析の合計 3つの有限要素解析ステップによって繰り返す解析手法である. 最初の流体構造連成場解析において,流れ場の非線形性,また構造体の何学的非線形性の考慮のために,流体および構造のそれぞれの解析において繰り返し計算が必要となり,Newton-Raphson 法に基づいた解析法を用いた.また形状修正解析では,形状修正の支配方程式を線形弾性問題に置き換えて解く方法を用いた.最後に,二次元問題のプログラムを開発し,簡単な数値解析を行って提案する解法の妥当性を検証した.
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今後の研究の推進方策 |
上記の項目(3)から(5)の問題に対して検討する.すなわち, (3) 内部流路の部分領域において流速を制御する流路形状決定問題,(4)内部流路問題に対して,全流体領域の散逸エネルギー最小化と弾性壁の剛性最大化を目的とする多目的形状最適化,(5) 内部流路問題に対して,全流体領域の散逸エネルギー最小化と部分領域において流速を制御する多目的形状最適化に対して検討を行う.具体的には,それぞれの問題の定式化,形状修正のための分布系感度関数の導出,解析アルゴリズムの提案,プログラム開発,数値解析を行って,提示する解析手法の妥当性の検証を行う.
これまでに得られた研究成果について,国内,国際会議において口頭発表,および雑誌論文として発表することを計画している.
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:当初の計画では,研究開始の初年度に高性能を有する計算機を購入し,幾何学的非線形性を考慮した構造領域に対する剛性最大化問題に関して,大規模な数値解析を実施する予定をしていた.しかしながら,高性能計算機を利用して大規模で複雑な解析を行うよりも,比較的簡単な問題に対して,形状最適化理論そのものの検証を優先した.実際には,既存の計算機を用いてその理論に基づくプログラム開発,数値解析を行って,提示する解法の基本的な妥当性を検討した.その結果として,次年度使用額が生じた.
使用計画:上記に関連して,大規模数値計算機1台で数値解析を行うよりも,複数の中規模数値計算機によって数値解析を実施する方向で検討を進めている.
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