研究課題/領域番号 |
22K03928
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
太田 光浩 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 教授 (00281866)
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研究分担者 |
岩田 修一 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00293738)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 気泡上昇運動 / 界面揺動 / 非線形運動 / 粘弾性特性 |
研究実績の概要 |
アルカリ溶解性会合高分子(HASE)水溶液を上昇する気泡では,HASE水溶液の粘弾性効果により気泡底部から様々な伸長形状が形成され,伸長形状部でマイクロスケールの自己組織構造が発現することを調べてきた.これらはアルカリ物質としてNaOHを用いてHASE水溶液を調整した時に検察されたが,炭酸ナトリウム(Na2CO3)を添加してHASE溶液を調整すると,HASE溶液中を上昇する気泡は,マイクロスケール構造を有しつつ,界面揺動が発生し,不規則な非線形上昇運動が発現することが観察された.本年度は,上昇気泡に発現する界面揺動現象・非線形上昇運動について詳細に調べた. pH=9に調整した10.0 および 3.2 Pa・s のゼロ剪断速度粘度をもったHASE水溶液中を上昇する気泡運動を広範囲の気泡径条件に対して調べた結果,両溶液とも定常状態であった気泡の界面が突然揺動する特徴的な現象が空間・時間的にランダムに発生することが観察された.揺動現象が発生すると気液界面上を揺動が伝播し,気泡の進行方向が変わることで非線形的な運動をし,連続して揺動が発生すると複雑に上昇軌跡が変化すること分かった.また,気泡頂部から揺動が発生した際は,下流方向に揺動が伝播することで上昇速度が大きくなることも分かった.これらの特徴的な運動が発現するのは気泡径がおよそ20 mm以上の条件であり,ゼロ剪断速度粘度が大きいほど界面の揺動が激しくなり,気泡の運動軌跡および上昇速度,気泡形状の変化がよりダイナミックになることも明らかになった.また,次年度からの研究計画である溶液をpH=7と11に調整した場合についてテスト実験を行った結果,pHに依存した現象が観察された. この特徴的な現象は,Na2CO3を添加して調整したHASE溶液が持つ弾性特性の影響である可能性が大きいという重要な知見を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度の達成度としては,順調であった. 上昇気泡に発現する界面揺動現象・非線形上昇運動を予定通りに調べることができ,計画通りに研究が進展している.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き上昇気泡に発現する界面揺動現象・非線形上昇運動に焦点を当てて実験を行う.今後は,まず溶液のpHの影響を調べる.気泡上昇運動に,溶液のpHの影響があることが,テスト実験から判明しており,pH=7,9,11で同じゼロ剪断粘度を持つHASE溶液で実験を行い,pHの影響を明らかにする.特に上昇気泡に発現する界面揺動現象・非線形上昇運動の発現条件(気泡径やゼロ剪断速度粘度)の明確化,界面揺動・非線形上昇運動の特徴について焦点をあて詳細観察を行う.pHの影響から,界面揺動・非線形上昇運動のメカニズムについて考察を行う.pHに依存した気泡上昇運動の相違から,Na2CO3系HASE溶液での界面揺動・非線形上昇運動のメカニズムについて考察を行う. また,炭酸カリウム(K2CO3)で調整したHASE溶液での実験も計画し,炭酸イオンの影響に関する考察を行う準備をする. 令和4年度に得られた成果を国際会議と国内学会にて発表する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
1,373円の未使用額が生じたが,少額であり,予定通りの予算使用となっている. 残金は,消耗品(試薬)の購入に使用する予定である.
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