研究課題/領域番号 |
22K03930
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
北村 拓也 長崎大学, 工学研究科, 助教 (30794648)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 一様等方性乱流 / 確率幾何学 / 微分・積分幾何学 / エネルギー散逸率 / Minkowski汎関数 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,微分・積分幾何学に基づいた渦構造の幾何学的特徴付と確率幾何学に基づいた流れ場の幾何化への展開を図ることである.令和四年は,研究実施計画に基づいて,一様等方性乱流の形態論解析の計算コードの開発および解析を実施した. 乱流の動力学や統計性を議論する上で乱流の微細構造を特徴づける物理量であるエンストロフィーおよびエネルギー散逸率の幾何について解析を実施したところ,(i)低エンストロフィーおよびエネルギー散逸率の構造はスポンジ構造を有すこと,(ii)高エンストロフィーはチューブ状,高エネルギー散逸率はシート状の構造を有すことが定量的に示すことができた.また,エンストロフィーおよびエネルギー散逸率のMinkowski汎関数は対数正規分布に近い特徴を有すことがわかった.本成果を二国間交流事業で発表し,十分な収穫を得ることができた.さらに,二国間交流事業を通して,共同研究の広がりを図ることができた. 一方で,共同研究を通して平均エネルギー散逸率のレイノルズ数依存性に関して大きな進展があった.平均エネルギー散逸率が十分高いレイノルズ数において一定となることは乱流の非線形性に由来することが理論解析を通してわかった.また,定常および減衰乱流における直接数値計算を実施した結果,非線形項から由来する項は,定常および減衰乱流によらず一定となることがわかった.本成果は,Richardson-Kolmogorovエネルギーカスケードの抽象が定常および減衰乱流において成り立つことを支持するものである.本成果に関する結果は現在論文投稿中である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績」の項で記したように (1)当初計画通り,形態論解析の計算コードの開発および解析を実施した. (2)エネルギー散逸率が十分高いレイノルズ数において一定となることが,乱流の非線形性に由来することがわかった. 以上のことから,本研究はおおむね順調に進展していると判断される.
|
今後の研究の推進方策 |
当初の予定では,令和五年度後期において格子乱流の形態論解析を実施する予定であったが,共同研究を通して散逸異常に関する研究が大いに進展した.また,現在非一様乱流への理論展開もできていること,および本研究の目的の一つに渦構造とエネルギーカスケードや混合の理解がある.そこで,令和五年度は (1)エネルギー散逸率の非一様乱流への展開 (2)渦構造とエネルギーカスケードや混合の理解促進に向け,本年度実施した一様等方性乱流の形態論解析を拡張した形で実施する. また,これまで得られた成果をまとめる. なお,格子乱流に関する形態論解析は研究の進展次第で当初の研究計画通り後期に実施する予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
購入する商品の変更に伴い,次年度使用額が生じた.令和五年度HDDの購入費として使用予定である.
|