研究課題/領域番号 |
22K03950
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
小野 俊雄 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (40332639)
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研究分担者 |
村上 修一 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 和泉センター, 主幹研究員 (70359420)
佐藤 和郎 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 和泉センター, 主幹研究員 (30315163)
山田 義春 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 和泉センター, 主任研究員 (50463625)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 微細加工 / 熱マネジメント / 熱伝導率 / 磁性体の量子相転移 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は磁場によって熱流をコントロールできるような磁性体を,微細加工技術によって作成した熱流プローブを用いて探索することである.研究計画の初年度である2022年度は,過去に作成した熱流プローブを用いた参照物質の測定を行った.そしてその測定結果から,このプローブの持つ課題を洗い出すとともに,その課題の解決策を研究分担者と立案した.以下,具体的に説明する 本プローブでは,熱伝導率測定に必要なヒーターおよび2つの温度センサを厚み1μmのダイアフラムの上に成膜し,試料を熱伝導グリスで接着した上で測定を行う.本年度の測定からは,測定値の再現性に課題があることがわかった.詳細な解析を行ったところ,ある測定ではヒーターと試料の間の熱接触が良好でな買ったことがわかり,また別の測定では温度センサーの一つと試料の間で同様に熱接触が悪くなる,という事象が確認された.ヒーターやセンサーの成膜されたダイアフラムには,製作工程の都合上,圧縮応力により座屈が生じる.この座屈によって,試料とヒーターおよび,試料と温度センサーの熱接触が悪化したことが,再現性が低下した原因として考えられた.そのため,これまでダイアフラムとして用いていたSiをベースとしたダイアフラムから,室温付近で応力の方向が引張方向であることが知られている別の材質のダイアフラムを持つ新たな設計のプローブを計画した.そして,このプローブに使用する温度センサの成膜条件の最適化など,製作の準備を進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
概要の箇所に記述したように,本年度は新たなプローブの作成に着手した.そのプローブ作成の際には,スパッタ成膜により形成する温度センサーの成膜条件を最適化する必要がある.特にスパッタ成膜時の雰囲気圧力が,温度センサーの特性を決める重要なパラメータとなる.しかしながら,本年度に行った条件探索時に成膜装置の真空排気系の問題に気づかないまま作業を進めていたため,雰囲気圧力を同じ設定にしていても,センサーの特性が再現できない事象が発生した.その原因の特定に至るまでに想定の期間が必要となったため,進捗が計画より遅れた.
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今後の研究の推進方策 |
本年度でセンサーの成膜が完了したため,改良したプローブの制作には特段の困難はないと考えられる.新たに製作されるプローブでは,概要の説明で記述したダイアフラムの改良が主要なポイントであるため,本年度に行った測定を再度新しいプローブで測定し,再現性を向上できているか確認を行う.また,本研究では,磁場中でスピン状態が変化する磁性体の熱伝導率に注目している.該当する磁性体は数多く存在するため,プローブの製作が完了次第順次測定を進め熱流制御に適した磁性体の探索を行う.また,収集データの解析作業の半自動化を進め,データ処理の効率を高めていくことも進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は熱流測定プローブの改良に着手した.新たにプローブを作成するにあたって,温度センサーの成膜条件の最適化を行った.しかしながらスパッタ装置の条件設定に見落としがあったため,成膜条件の探索が予定よりも長期間かかった.そのため,スパッタ装置の使用料金など,微細加工機器の使用料が計画より多く要した.しかしながら次年度使用額の規模は小さく,研究計画に特段の影響はないと考えられる.
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