研究課題/領域番号 |
22K03959
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
菊川 豪太 東北大学, 流体科学研究所, 准教授 (90435644)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 熱工学 / 分子動力学 / 有機分子修飾膜 / 界面親和性 / 熱輸送特性 |
研究実績の概要 |
自己組織化単分子膜(SAM)をはじめとした有機分子薄膜材料は,固体表面の物理化学的特性を分子スケールから柔軟に制御する技術として研究が進んでいる.しかしながら,ソフトな特性を有する有機分子膜表面における界面熱輸送特性および界面親和性に対する分子論的メカニズムは必ずしも明らかになっていない.本研究では分子動力学(MD)シミュレーションや機械学習によるデータ分析を駆使し,有機分子修飾膜が有する分子スケールの特性(分子構造や化学的性質)と界面熱輸送特性や界面親和性との相関性を明らかにすることを目的として研究を行う. 2022年度は界面熱輸送特性の評価として,親水性を持つポリエチレングリコール(PEG)末端を有するSAMについて,水液体界面との熱コンダクタンスをMDシミュレーションを用いて測定した.SAM末端の修飾基を疎水性および親水性とし,またPEG鎖長を変化させたところ,PEG鎖長が短い場合に界面熱コンダクタンスが大きくなることを明らかにした.これについて,PEG鎖の揺らぎとSAM末端修飾基の構造が主要因であることを解明した. 界面親和性の評価として,今年度はやや親水性をもつSAM末端と疎水性SAM末端を表面にパターニングした不均一なSAM表面の分子モデリングを行い,SAM上における水液滴の濡れ状態を再現した.予備的な検討として,水液滴の接触角を測定した.その結果,各々の接触角の中間的な接触角を示すことが明らかになった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SAM・液体界面の界面熱輸送特性および液滴接触モデルにおける界面親和性の評価について,分子動力学シミュレーションのモデリングからシミュレーション結果の解析に至るまで,一通りのワークフローを確立したため,順調に進捗している.界面親和性については,界面自由エネルギー評価や液滴接触状態の依存性について,今後実施していく予定である.
|
今後の研究の推進方策 |
今後は界面熱輸送特性の評価については,様々な不均一SAM界面,SAM鎖長や末端基を変化させ,界面熱輸送特性の測定を行う.また,界面親和性の評価についても,不均一なSAM界面における液滴接触状態を変えたモデリングを行い,接触角の測定や局所応力解析を行う.また,界面張力・界面自由エネルギーの直接評価を実施し,ソフトな界面における濡れ性の理解を進める.このようにデータの蓄積を進めた上で,分子スケール構造要因の評価を行い,界面親和性や界面熱輸送特性との相関性を機械学習によるクラスタリング手法により明らかにしていく.
|
次年度使用額が生じた理由 |
予定していた物品費(計算機など,一部計算プログラムの改良を優先したため),消耗品(記録メディアなど)や旅費について,当該年度で使用する必要性がなくなったため次年度使用額が生じた.これについては,研究の進捗や研究遂行上の必要性に応じ,次年度に執行する予定である.
|