研究課題/領域番号 |
22K03960
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
鹿野 一郎 山形大学, 大学院理工学研究科, 教授 (10282245)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 小型冷却器 / 蒸発潜熱 / 沸騰熱伝達 / 熱伝達促進 / 限界熱流束予測 |
研究実績の概要 |
令和5年度は、前年度に導出した限界熱流束(CHF)予測式の適応範囲を広げるために、沸点の異なる2種類の冷媒に対してサブクール流動沸騰熱伝達実験を行った。冷媒は、HFE-7000(3M製、沸点34 ℃)、AMOLEA(AGC製、沸点15 ℃)を採用した。また、実験パラメータとして、電界、流量、系圧力、サブクール度を変化させて予測式の精度を検証した。予測式中には、液体の誘電率、および沸騰面と液体との接触角を代入する項がそれぞれあるが、沸点が常温よりも低いAMOLEAのデータを得ることができなかった。そのため、誘電率はモル分極率の実験値を文献から検索し、クラジウス・モソッティの式を用いて誘電率を求めた。また、誘電率の計算精度は、液体と蒸気の界面に発生する静電圧力を測定することによって検証した。静電圧力を測定する装置は、液体が蒸発しないように加圧できる装置を開発した。また、接触角は、-5 ℃の恒温室内で稼働できる接触角測定装置を開発して測定した。静電圧力は、-3 kV/mmの電界に対して150Paを発生し、接触角は13.48 °を示した。誘電率と接触角が分かっているHFE-7000のCHF予測値は実験値に対して±18 %以内の精度で予測できるのに対して、沸点の低いAMOLEAの場合でも、予測式は実験値を±8 %で予測できることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
前年度は、当初の計画を前倒してCHF予測式を構築し、実験結果との比較において実験を±18 %の精度で予測できることを明らかにした。今年度は、様々な冷媒に対して予測式が有効かどうかを確かめるために、異なる2種類の冷媒に対してCHF予測式を検証することにした。採用した冷媒AMOLEA(AGC製、沸点15 ℃)は沸点が低いので、静電圧力や接触角測定の測定のために実験装置の開発を行い、それらの結果を予測式中の物性値に代入した。その結果、物性の異なる液体を用いても、CHF予測式は実験値を18 %以内で予測できることを明らかにした。予測値と実験値との比較において、電界印加による沸騰促進は沸騰容器内の蒸気の割合(乾き度)を上昇させ、潜熱による吸熱作用が限界熱流束の向上に大きく作用することが分かった。さらに、電界印加による促進効果により、沸騰容器内に流入してきた液体がすべて蒸発するまで沸騰が促進されていることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、CHF予測式の精度検証のため、さらに沸点の異なる液体AE-3000(AGC製、沸点55 ℃)を用いて実験を行う。また、沸騰面性状とCHFとの関係には様々な手法が報告されており、特に沸騰表面の吸水能力(Wickability)との関係に注目して、CHF予測式を改良してく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入費に端数が発生したために、958円の次年度使用が生じた。未使用額は、国内会議発表のための経費に充てることとしたい。
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