研究課題/領域番号 |
22K03961
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
窪山 達也 千葉大学, 大学院工学研究院, 准教授 (80578831)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 熱機関 / 壁面熱損失 / 消炎 / 壁面熱流束 |
研究実績の概要 |
本研究では,内燃機関の冷却損失低減技術の開発に繋がる基礎的な知見を得るため,ノックサイクルと正常燃焼(非ノック)サイクルに対して,急速圧縮膨張装置を用いて薄膜型熱電対を用いた壁面熱流束計測と伝播火炎・ノッキングの高速度直接撮影を行い,ノッキングと壁面熱流束の関係を調べた.また,薄膜型熱電対による燃焼室壁面の熱流束計測方法・2線式熱電対による燃焼室壁面近傍の局所ガス温度計測方法・シャドウグラフ撮影による火炎面の観察方法を検討した.以下に実験により得られた知見を示す. (1)燃焼室壁面の熱流束は,火炎が到達してから3~5msの遅れを経て上昇を開始し,15~30msの遅れを経て最大値をとる.この遅れは自着火による圧力振動が大きいものほど,また自着火位置に近いほど,短くなる.(2)この遅れは,火炎面が壁面近傍に到達してから壁面近傍の未燃ガスが高温の既燃ガスからの熱伝導によって温度上昇し,極壁面近傍の温度勾配が上昇するのに遅れがあることを示していると推察する.(3)さらに,その熱伝導によって温度上昇した未燃ガスの一部が熱発生することで,熱流束が最大値をとる時期が遅れる.(4)燃焼室壁面の熱流束の最大値は,自着火による圧力振動の大きいものほど大きくなる.(5)これは,圧力振動により,火炎が壁面近傍に到達してから壁面近傍の温度勾配が成長する時間が短くなり,燃焼室側のガス温度がより高い時期に温度分布が発達するため,熱流束の最大値がノックサイクルでは大きくなると考える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,熱流束の計測システム,壁面近傍の火炎挙動観察のためのOH,CH自発光撮影システムを構築した.計測の第1段階として,予混合伝播火炎を対象に壁面熱流束と壁面近傍の火炎挙動の高速度撮影を予定通り実施した.
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今後の研究の推進方策 |
今後は2年目は,副室から噴出する噴流火炎の燃焼特性,および壁面への衝突速度や壁近傍の流速分布などの流動特性を把握し,これらが副室の諸元などによってどのように変化するのかを調べる.計測対象は,急速圧縮膨張装置を用いて実現する高温高圧燃焼器内の噴流火炎とする.噴流火炎の燃焼特性については,副室から噴出する噴流が発熱反応を伴いながら主室内に噴出されるのか,あるいは発熱反応を終えた高温の既燃ガスとして主室内に噴出され,主室内の予混合気を着火させるのかを実験的に明らかにする.具体的には,燃焼圧力の計測値から熱発生率を解析すると同時に,燃焼反応の中間生成物であるOHラジカルとCHラジカルからの紫外自発光,既燃ガス中に存在する燃焼生成物CO2の赤外放射光の高速度撮影を行うことで,副室から噴出する噴流の反応状態と燃焼特性を明らかにする.
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