本研究では,急速圧縮膨張装置を用いて,薄膜型熱電対を使用した壁面熱流束計測と,伝播火炎中のCH*ラジカル自発光の高速度撮影を行い,壁温の違いによる消炎層層厚さおよび壁面熱流束への影響を調べた.この結果,燃焼室壁面の熱流束は,どの条件においても火炎が壁面に到達してから数msの遅れを経て上昇を開始することがわかった.この遅れは火炎面が壁面近傍に到達したときの壁面近傍,未反応帯に存在する未燃ガスを介して高温の既燃ガスから壁面へ熱が伝達する際,中間に存在する未燃ガスの温度が上昇する過程にかかる時間であると考えられる.また,温度による違いに着目すると,燃焼室壁面の熱流束の最大値は,110℃以下で高い温度依存性があり,壁温と負の相関関係を示した.しかし,この特性は110℃を境に覆り,燃焼室壁面の熱流束の最大値は,高温場(110℃より高い温度帯)に低温場ほどの温度依存性はないが正の相関関係を示した.また,この結果は熱流束最大時の熱伝達係数でも同様であった.これに関して,筒内と壁表面の温度差に原因があると思われたが,熱流束最大時の筒内-壁表面間温度差は温度依存性を示さなかった.
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