研究課題/領域番号 |
22K03977
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高木 力 北海道大学, 水産科学研究院, 教授 (80319657)
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研究分担者 |
鳥澤 眞介 近畿大学, 農学部, 講師 (80399097)
竹原 幸生 近畿大学, 理工学部, 教授 (50216933)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | バイオメカニクス / 魚類 / 遊泳 / 鰭 |
研究実績の概要 |
魚類の遊泳運動時における推力などの流体力学的解析は,CFDやPTV解析といった流体解析技術の登場により,より現実的で細緻な解析が可能となってきている。しかしながらCFD解析では実際の魚類の柔軟な動きを解析に取り込むことは困難であり,PTV解析でも渦などの立体構造を計測することは難しい。 本研究では魚類の尾鰭に焦点を当て,この柔軟な性状が推力創出の機能性向上をどのように実現しているのか,尾鰭を対象とした高速度撮影と周辺流れ場のPTV解析を通して明らかにする。さらに,尾鰭運動そのものにも着目し,単純な調和振動だけでなく,尾鰭運動の柔軟な変化が個体移動の機動性能向上にどのように役立っているのか分析する。本年度得られた成果は以下の通りである。 一般的な魚類は尾鰭振動により魚体後方域に渦輪を形成し,そこから生成されるジェットの反作用で推力を得ている。そのため,後流域の渦度の状態を詳しく分析することは個体の推力発生メカニズムを知る上で重要だが,従来の一般的なPTV解析(粒子移動追跡法)では単層のシート光上の流れ場だけしか捉えることができないため,渦輪の立体構造までを調べるためには十分でなかった。そこで,本研究では,波長の異なる2層のレーザーシート光を照射することによって,渦輪形成の空間的状態を調べることにより,渦度の空間構造が評価できるか試みた。実験供試魚はマアジで,複層のシート光で計測された流れ場から導出された循環は,尾鰭振動の周期と振幅に同調して変化することが確認された。また,計測面に対する尾鰭の位置の変化が循環の値にどのように影響するか分析したところ,尾叉から離れるに従って循環の値が小さくなる様子が確認され,複層シート光による計測が有効であることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
魚類の推進特性を理解する上で,尾鰭振動による後流域分析は必須であり,それを通した流れ場構造や渦度の分布の把握が必要である。そのための空間的構造把握をどのように行うかが技術的な課題であったが,複層型のPIV解析実験系というアイデアにより解決できるとしていた。本年度はこの実験系構築を実現できた。これを足掛かりとして,尾鰭のしなやかさが推力発生にどのような役割を果たしているのか理解の向上が期待できる。生体サンプルの取得が限定されていたため尾鰭の曲げ剛性の定量化はまだ実現できていないものの,剛性計測実験の目処を立てられたため,2年目に実施する。
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今後の研究の推進方策 |
尾鰭翼面の曲げ剛性を実験的に定量化する。さらに,圧力荷重と尾鰭変形について,その特性を遊泳速度との関係から分析したうえで,尾鰭の曲げ剛性が遊泳機能に与える影響を評価する。また,数種類の剛性特性の振動翼模型を用意して,水槽実験による後流域特性を評価する。特に曲げ剛性が翼端渦の生成過程に与える影響を分析する。さらに,尾鰭曲げ剛性が推力(揚力)発生にどのような機能性向上を果たしているのか複層PIV解析を適用した水槽実験により確認する。振動翼模型のための実験機構を研究協力者とともに開発する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
取得データの整理や画像取得の補助作業を実施してもらう予定であったが,研究者自身により処理を行うことができた。また,実験,協議に関わる経費がコロナ禍の影響等もあり当初の予想より下回った。 これらの経費は引き続き,2年目における実験,協議のための旅費として使用される予定である。
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