研究課題/領域番号 |
22K03991
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪産業技術研究所 |
研究代表者 |
喜多 俊輔 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 和泉センター, 主任研究員 (40761622)
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研究分担者 |
梶川 嘉延 関西大学, システム理工学部, 教授 (30268312)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 音源探査 / 音響振動連成 / ドメイン適応 |
研究実績の概要 |
本年度では、構造物内部の音源を探査するシミュレーション上で構築された音源探査モデルを実環境へ適応することを目的に、実環境のデータをシミュレーションデータに変換するドメイン変換モデルを導入した音源探査手法の性能評価を実施した。本音源探査手法は構造物外部の3箇所で観測された加速度周波数応答を学習モデルの入力データとし、音源位置を教師ラベルとして利用することで、分類・回帰問題として定義され性能が評価された。 ドメイン変換モデルとしては、Autoencoder、Deep convolutional autoencoderならびにpix2pixを比較対象とし、それぞれの変換性能は実環境データの割合に対してRoot Mean Squared Errorとt-Distributed Stochastic Neighbor Embeddingを利用した2次元の可視化によって評価された。 結果としては、pix2pixによって変換された実環境のデータの分布は最もシミュレーションデータの分布に一致しており、その変換データをConvolutional neural networkに入力することで高精度な音源探査が可能であることがわかった。 また、学習安定性に関しては、加速度周波数応答のデータをベクトルとして扱うのではなく、画像として扱う方が優れていることがわかった。 ただし、本手法は2つの目的関数を利用することが原因で、変換性能の向上が直接的に音源探査性能の向上に寄与する保証はない。そのため今後は、ドメイン変換モデルと音源探査を実施するモデルの統合を検討する。 ※本研究の一部は、Inter-noise 2022にて発表、ならびにIEEE/ACM Transactions on Audio, Speech, and Language Processingに掲載済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度では、半教師あり条件下において、シミュレーション上で構築した音源探査モデルによる構造物内部の音源探査を実現することを目的に、実環境ドメインからシミュレーションドメインに変換するドメイン変換モデルの導入ならびにそのモデルによる変換データを利用した音源探査性能の評価を実施した。 ドメイン変換モデルとして特に、Autoencoder、Deep convolutional autoencoderとpix2pixの変換性能を比較し、さらにその変換データを利用した音源探査精度を評価した。 当初の計画通り、音響加振に由来する構造物の加速度周波数応答に対して、実環境ドメインからシミュレーションドメインへの変換に有効なモデルの構造ならびに評価方法に関する知見を得た。 さらに本年度に構築した、音源探査を実施するモデルの前段にドメイン変換モデルを導入する音源探査手法は、これまで未解決な課題であった構造物内部の音源探査を実現するための手がかりとなる手法であり、その成果は、Inter-noise 2022での発表とIEEE/ACM Transactions on Audio, Speech, and Language Processingにて査読付き論文として公表された。
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今後の研究の推進方策 |
本年度において提案した手法は、2つの目的関数を利用することが原因で、変換性能の向上が直接的に音源探査性能の向上に寄与する保証はない。 そのため次年度では、ドメイン変換モデルと音源探査を実施するモデルの統合を検討する。具体的には、シミュレーションドメインと実環境ドメインの双方のドメインを変換するcycleGANと識別器が直接的に音源位置を推定することが可能な生成モデルであるAc-GANを組み合わせたモデルを構築する。特に、これらのモデルは生成モデルとして注目されている手法であるため、その統合モデルの識別器の解析を実施する。また並行して、本研究の最終目標である教師なし条件下における構造物内部の音源探査を検討するために、音響構造連成解析によるデータ生成と実験を行う。 そして、最終年度では、統合モデルを利用した音源探査手法の性能評価を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内外の学会参加旅費を計上していたが、新型コロナ感染症の影響によってハイブリッド開催となったためオンライン参加を選択した。 次年度では、ほとんどの学会でハイブリッドもしくはオフラインの開催となるため、現地参加のみの学会参加旅費に利用する予定である。
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