研究課題/領域番号 |
22K03998
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
吉村 卓也 東京都立大学, システムデザイン研究科, 教授 (50220736)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 振動設計 / モード解析 / 部分構造合成法 / 周波数応答関数 |
研究実績の概要 |
部分構造合成法により2分系が結合する場合の振動応答を予測するとき,周波数応答関数(FRF)を用いた部分構造合成法による予測式が用いられる.これをコンプライアンス型予測式とする.振動設計への適用を考えたとき,結合部特性を逆数で表したインピーダンス型予測式が有用であることが分かった.この予測式を1自由度結合の場合の振動設計に活用し,まず動吸振器設計への応用を検討した.この主系と付加系の結合予測に上記のインピーダンス型予測式を用いることにより,動吸振器付加後の応答を簡易に予測することが可能となった.さらに,動吸振器を複数個取り付ける場合にも簡易予測が可能となり,各動吸振器の特性の重ね合わせにより,付加後の応答予測が可能になることが分かった. 構造変更により振動応答を低減させるとき,1自由度結合であれば,共振による最大応答がどのように変化するかを予測可能であることが分かっていたが,多自由度結合の場合の予測は困難であった.これに対して,多自由度結合における部分構造合成法の結合予測式を変形させ,構造変更をFRFのゲイン変化として捉えることにより,固有振動数及び振動応答変化を高い精度で予測可能なことが分かった.この考え方を自動車の構成部品に適用し,全体の応答低減のためにあるコンポーネントの振動特性をどのように変化させれば良いかを導くことができた. 従来,構造変更は感度解析に基いてある部位の質量や剛性を変化させ,振動応答を実現させていたが,感度は設計変数に対する微分係数を表現するため,感度に基いて構造変更を実施しても予測通りの結果が得られないことがあった.これに対して,構造変更が1自由度の場合には定量的な予測が可能であり,応答を所望の振幅に抑えるために,どれだけの構造変更が必要になるかを定量的に導くことができた.現在,本解析法については,特許出願を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績で述べたように,当初予定していた方向で進んでおり概ね順調に進展している.振動性能の割り付けについては,1自由度結合の場合の設計要件を検討した.具体的には分系A, Bからなる構造物に対して,分系Aの振動特性が定まると,これにより分系Bに作用する内力の上限値が定まる.この内力の上限値に対して振動応答が許容値に収まるように分系Bを設計する方法を考えた.そしてこれを設計要件とすると,振動応答の上限予測値に保守性が高くなることが分かった.すなわち,設計要件を満足するように分系Bを設計すれば応答は許容値以下となるが,その設計要件はやや厳しすぎる.今後は,この保守性を緩和させる実用的な方法を検討する.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の大きな課題は,分系間が多自由度結合をする際に,振動性能の割り付けをどのように実現できるかであると考えている.多自由度結合においては,一つのコンポーネントのゲイン変化を与える場合について,応答低減につなげることができたが,性能割付けには至っていない.部分構造合成法のコンプライアンス型とインピーダンス型のそれぞれを活用することで,分析法としても多様な視点を与えることができる.これらを上手く活用することで,振動伝達経路解析(TPA)にも応用することができないかを副次的に検討する. 感度解析に代わる構造変更手法については,1自由度結合の場合に応答を所望の振幅に抑えるために,どれだけの構造変更が必要になるかを定量的に導くことができた.これを多自由度系に拡張することができれば,ある1点に対する質量や剛性付加ではなく,複数点やある領域の構造変更などに拡張することができるため,有用性が高い.従って,構造変更による振動低減においても多自由度への拡張検討を進める.
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