研究課題/領域番号 |
22K04005
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研究機関 | 奈良工業高等専門学校 |
研究代表者 |
酒井 史敏 奈良工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (80342533)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | システム同定 / 反復学習制御 / 非線形摩擦 |
研究実績の概要 |
本研究では非線形摩擦や入出力に静的非線形要素を有するシステムに対して射影型反復学習制御に基づく連続時間システム同定法(以下,反復学習同定法)に必要なパラメータ空間表現を構築する方法を提案することを目的としている.本年度は,送りねじ駆動機構や多軸ロボットを対象とし,任意の外部入力を与えたときに得られる入出力信号から,反復学習同定法に必要なパラメータ空間表現を求める方法の確立するために,以下の2項目について研究を進めた. (1) 従来研究ではパラメータ空間表現の推定に,対象システムから得られるインパルス応答列を必要としているが,インパルス応答を用いたパラメータ空間表現の推定は観測雑音の影響を受けやすく,特にハイゲインコントローラを用いた閉ループ系の場合,入力する単位インパルスに対する観測出力の変化が抑えられるため,線形時不変系を対象システムとした場合であっても,推定されたパラメータ空間表現には観測雑音に起因する大きな不確かさをもつ可能性が高いという問題があった.そこで,非線形摩擦を有するシステムに対して,M 系列信号等の任意の外部入力を与えたときの入出力信号を用いてパラメータ空間表現を推定する方法について検討を行った. (2) 提案手法の有効性を検証するための実験装置として送りねじ機構や多軸ロボットのシステムを構築し,実験装置の基本的な特性を明らかにするための予備実験を行った. 今後は,主に実機を用いて提案手法の有効性を明らかにする予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までの研究では,送りねじ機構に作用する非線形摩擦をKarnopp摩擦モデル,GaussモデルおよびLIP(Linear-in-the-parameters)摩擦モデルで近似できると仮定しているが,現実に生じる非線形摩擦とこれらの摩擦モデルの特性が完全に一致することはないため,パラメータ空間表現を構築する際の摩擦モデルの選択方法が明らかになっておらず,解決すべき課題が残されている.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,パラメータ空間表現を構築する際の摩擦モデルの選択方法を明らかにしたうえで,本予算で購入する多軸ロボットを用いて従来研究との比較に基づき提案手法の有効性について検証を行う.その際,非線形摩擦だけでなく,多軸ロボットの非線形性の扱いについての検討を行う必要がある.また,推定されたパラメータ空間表現を用いた非線形システムに対する反復学習同定法のアルゴリズムの構築を行い,同定精度について検証を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
実験装置の構築において必要な消耗品の調達が間に合わなかったためであり,消耗品の購入費に充てる予定である.
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