研究課題/領域番号 |
22K04029
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研究機関 | 公立はこだて未来大学 |
研究代表者 |
三上 貞芳 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 教授 (50229655)
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研究分担者 |
浜 克己 函館工業高等専門学校, 生産システム工学科, 特任教授 (00180927)
中村 尚彦 函館工業高等専門学校, 生産システム工学科, 准教授 (30435383)
古館 裕大 公益社団法人函館市医師会函館市医師会看護・リハビリテーション学院(生体医工学研究センター), 生体医工学研究センター, 研究員 (90900209)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 粒子ジャミング / ロボットハンド / 脚ロボット / 把持機構 |
研究実績の概要 |
本研究は,剛体リンクのみで構成された形状が,受動外圧により構造同士がかみあうことで,その形を保つようにロック(固形化)するような,新たな頑強なJammingの仕組みによる把持機構を提案するもので,具体的形状,把持力等の仕様を満たす設計方法,さらにロボットへの無介入で装着できる特性を生かした新たな応用を明らかにすることを目的としている.機構の構成方法として,プッシュロック型(体積の縮小で可動小片が互いに入り込みロックする),プッシュオープン型(一か所を押すことで全体が包み込むように構造展開しロックする),プッシュクローズ型(一か所を押すことで全体が閉じる方向に変形しロックする)という3種類のリンクジャミングの考え方を提案している. 初年度である2022年度は,提案した原理によるロック機構が効果を発揮する応用(実例)とその実現方法を中心に研究を進め.以下の成果を得た. 1.プッシュロック型の考え方が,研究者らが進めている「埋没しない雪上移動のための両谷型車輪構造」の浮上原理を説明することが明らかになった.これにより体積縮小をさらに進めるような改良を見出し,実験で有効性を明らかにできた. 2.プッシュクローズ型の実例として従来から研究者らが進めている「紙短冊によるディスポーザブル包み込みハンド」に関して,食品を対象とした把持性能を明らかにするとともに,入力リンクの変位量の増加に対して把持圧力がある一定で頭打ちになる現象を見出し,把持対象を破損しないトルクリミット効果が自然に得られることを見出した. 3.プッシュオープン型の応用として,従来多脚ロボットのための自重による受動的雪面保持足部の研究を進めていたが,複雑なリンクではなく足部の先端を円筒形状にし特定角度でのロックを設けることで同様な面保持足部を実現できることがわかり,雪面だけではなく泥濘地の歩行を可能とする足部を実現できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は多数の剛体リンクに力を加えることで生じるJammingにより,さまざまな対象を把持するような機構を提案するものであり,原理として3つの剛体リンクのジャミング方式を提案している.これは,加えられる力から「受動的に構造が対象物を把持するようにロックする」という考え方である. 当初想定していた応用は,自然な考え方として脚ロボット等の自重により不整地や斜面を把持するような,移動をサポートする「靴」だが,本研究の目的の一つは,このような仕組みがより多くのロボット応用に適用できることと,その具体的な機構を明らかにすることである. これに対して今期は,(1)雪上移動を対象とした車輪,(2)板材を用いた柔軟把持ハンド,という新たな方向性を見出すことができ,具体的な形の設計と実験による性能の検証を行うことができた.また(3)従来の「靴」の応用についても,岩場や雪面ではなく,泥濘地を対象とした新たなよりシンプルな機構を見出すこともできた. よって研究は順調に進んで成果も得ることができていると考える.
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今後の研究の推進方策 |
リンクジャミングが効果的に利用できる対象がいくつか明らかになったので,今後は実験や解析を通じて,設計パラメータと性能の関係を明らかにしてゆきたい.ハンドに関しては形状や厚さと把持力の関係,雪上移動用車輪についてもサイズと雪中での浮力との関係,泥濘地用靴についても展開時のサイズ,および先端の円柱形状のサイズなどと浮力(機体保持力の向上と粘性抵抗力の低減)との関係を明らかにしてゆきたい. 加えて,利用対象として計画していた「人や動物に対して安全に把持・保持を可能とする機構」についても,今回明らかになった「板材(紙)短冊による柔軟把持ハンド」に関する研究をもとに,把持できる重量や形状に対してどのような板(紙)厚やサイズを用意すればよいのか,また今回明らかになったトルクリミット効果はどのような仕組みで起きているのか,設計パラメータはなにか,などについて明らかにしてゆきたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
(主な理由)研究成果発表のための出張旅費が当初の見積もりより安価に済んだため. (使用計画)今期で得られた成果をオープンアクセスジャーナルとして取りまとめることを予定しており,その投稿費として使用したい.
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