研究課題/領域番号 |
22K04049
|
研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
山本 真一郎 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (10514391)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 電波吸収体 / 金属パターン周期配列構造 / マイクロ波 / ミリ波 / 反射特性 |
研究実績の概要 |
これからの高度情報化社会の発展を支えるためには、特定周波数の電磁波を吸収する周波数選択性機能を有し、尚且つ薄型・軽量で安価な電波吸収体の開発が大いに求められている。本研究では、金属パターンを周期配列した人工材料(金属パターン周期配列シート)と誘電体で構成する新たな電波吸収体を提案し、その反射特性を実験的に評価した。具体的な実施内容を以下に示す。 ①金属パターン周期配列シートと誘電体を用いる薄型電波吸収体の設計 本研究で提案した電波吸収体に組み込む金属パターン周期配列シートの等価比誘電率は、金属パターンサイズに依存して共鳴形の分散特性を示すため、この特性を利用することにより共鳴周波数付近で整合条件を満たす周波数選択性電波吸収体が設計できることを明らかにした。金属パターンの基礎形状として、正方形や円形状の金属パターンから構成されるシートを作製し、誘電体(発泡材、アクリル板等)と積層することにより軽量で薄型な電波吸収体を実現できた。通常の電波吸収体は、母材に損失材(例えば、フェライト混合ゴム材等)を用いることがほとんどであるため、電波吸収体自体の重量が増し、厚みも大きくなる問題があった。本研究で提案した電波吸収体は、母材に誘電体を用いており、従来品に比べ1/8程度の薄型化を達成することができた。 ②垂直入射時における電波吸収特性評価 本研究で設計した電波吸収体の垂直入射時における反射特性を3GHzから13GHzのマイクロ波帯で測定した。シートの金属パターンサイズや配列間隔、誘電体の厚み等を調整することにより、整合条件を満たす電波吸収体が設計可能であることを確認した。 2023年度はミリ波帯に対応した電波吸収体を設計し、垂直入射時および実用での利用を想定した斜め入射時における反射特性を評価する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マイクロ波帯に対応した電波吸収体を新たに設計するため、電波吸収体を構成するための金属パターン周期配列シートの金属パターン形状、寸法や金属パターン配列間隔と電波吸収特性の関係を詳細に調べた。さらに、電波吸収体の母材に用いる誘電体と電波吸収特性との関連を検証するために、使用する誘電体の材質、厚みを変更した場合の反射特性を実験的に評価した。以上の研究により、マイクロ波帯における本電波吸収体の設計手法を確立することができた。 以上により得られた研究成果は、当初の研究計画通りにおおむね進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度はミリ波帯に対応した電波吸収体を新たに設計する。具体的には、マイクロ波帯用電波吸収体設計時と同様に、電波吸収体を構成する金属パターン周期配列シートの構造パラメータ(金属パターンの形状や寸法、配列間隔等)を適切に調整し、垂直入射時における反射特性の変化を実験により詳細に検証する。 次に、実用を想定した斜め入射時における電波吸収体の反射特性評価を実施する。さらに、実験により得られた反射特性結果の有効性を確認するため、伝送線路理論による反射特性計算値、FDTD法による電磁界解析値を実験値と比較することにより、設計する電波吸収体の有効性を確認する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2023年度以降に設計するミリ波帯用電波吸収体を作製する際に合わせて使用する計画としたため。また、反射特性測定用部品等もミリ波帯用電波吸収体評価時に合わせて購入する計画としたため。生じた翌年度分助成金を2023年度の研究計画に組み込み、本研究を遂行する。
|