研究課題/領域番号 |
22K04054
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
新海 健 東京工科大学, 工学部, 教授 (00758295)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | アーク / 液体プラズマ / 限流 / 電磁反発 |
研究実績の概要 |
2022年度は、液中アークプラズマのアーク抵抗・アーク電圧の向上を図るとともに、高速駆動の研究を行う計画であった。 液体材料として、水の他に、ハイドロフルオロエーテルを適用した。ハイドロフルオロエーテルは電気的負性が強く、アークの導電率を抑制することを期待した。一方で、絶縁破壊電界が水の1.5kV/mm程度に比べ、ハイドロフルオロエーテルでは8.0kV/mm程度と非常に高いことがわかった。したがって、液中アークチャンバーの電極ギャップを2.5㎜と小さくせざるを得なかった。実験の結果、水とハイドロフルオロエーテルでアーク抵抗に大きな差異はなかった。ギャップが2.5㎜と小さく、液体よりも電極材料に支配される電極降下領域のみとなっており、アークカラムが存在しないためと考えられる。 アーク電流に対し直交磁界を印加した実験を行った。磁束密度は167μT/A程度である。水中アークの実験で、磁界なしの場合、電流第1半波で0.05Ω→第2半波で0.06Ω→第3半波で0.06Ωと推移したのに対し、磁界ありの場合、第1半波で0.06Ω→第2半波で0.3Ω→第3半波で2.3Ωと推移し、磁界印加により、第2半波で5倍、第3半波で40倍近く高いアーク抵抗が得られた。ハイドロフルオロエーテルで実施した場合は、磁界印加効果はやや小さかったが同様の傾向であった。磁界印加のアーク抵抗向上効果は大きく、今後詳細に検討を進める。 高速駆動については、電磁反発を用いたアクチュエータを試作した。可動部に銅の短絡環(2次側)を設け、1次側コイルにコンデンサの放電電流を流し駆動したところ、1次側電流600Aで0.5m/s程度の速度が得られた。速度は2.0m/s程度必要と考えており、コンデンサバンクの増設を含め、改良を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
液体材料の検討、磁界印加によるアーク抵抗向上の検討は予定通り実施できた。今後の改良の指針を得ることができた。高速駆動についても、基礎モデルを試作し動作確認を行った。コンデンサバンクの増強を予定していたが、コロナ禍とウクライナ情勢による、世界的な材料不足と高電圧コンデンサの品薄により、当初の見積より価格高騰と納期の大幅な遅れが明らかになり、2022年度中に完了できなかった。コンデンサの納品は2023年度後半の予定である。
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今後の研究の推進方策 |
アーク抵抗をさらに向上するため、液体材料と磁界印加についてさらに検討を進める。液体材料では、コンデンサバンク増強後、ハイドロフルオロエーテル等について、電極ギャップを長くした実験で検証する。また、水にフィラーを添加して実験を行う。熱伝導率が高く昇華性のよい窒化ホウ素などを検討している。また、高速駆動については、電磁反発型のアクチュエータを改良し、アークを発生させる実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度に、限流チャンバー1個(40万円程度)、高電圧大容量コンデンサ3個(225万円程度)を購入予定であったが、コロナ禍とウクライナ情勢により、世界的な材料不足、高電圧コンデンサの品薄状況に陥り、価格高騰、納期の長期化が明らかになった。限流チャンバーは現状のものを改造して使用し、コンデンサは個数を減らして発注したが、納品および検収は2023年度後半となる予定で、2022年度の使用額に計上されていない。 2023年度は、上記のコンデンサの費用として264万円、その他、電極等の消耗品費4万円程度を計画している。
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