現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,大きさが異なる3台の2段型冷凍機 (膨張部と蓄冷器部,以下,コールドヘッドと呼ぶ) に2 kWクラスの圧縮機をそれぞれ接続して動作させ,実験的に4.2 Kの冷凍能力の評価を行った (以下,コールドヘッドの大きさから,S, M, Lのクラス分けで呼ぶ)。本コールドヘッドは,二つの冷却ステージを持ち,2段目が約50~4 Kの温度範囲を担当している。4 Kレベルの冷却性能に大きな影響を及ぼすのは2段目蓄冷器であり,特に内部に充填される球状蓄冷材(高温側からPb, HoCu2, Gd2OS2球が,われわれ独自の充填割合で充填されてある)と,それと熱交換を行う高圧ヘリウムガスとの振る舞いが重要である。また,冷凍サイクルを構築する上では,圧縮機が吐出するヘリウムガス質量流量 (以下,圧縮機流量とする) と,膨張空間へ出入りするヘリウムガス質量流量 (以下,膨張流量とする) のバランスも重要となる。一般的には,両者はほぼ同様な大きさを持つ。 本研究で準備した3台のコールドヘッドは,いずれも膨張流量が圧縮機流量よりもとても大きいため,通常の運転条件では,4.2 Kでの冷凍能力はほぼ発揮されないと予測できる。そこで,コールドヘッド内のディスプレーサの動作速度が通常は60または72 rpmで固定されているのに対し,それを新たに設けたインバータで低速動作させることで,1サイクル当たりの膨張流量を見かけ上増やす方法を取り入れた。実験結果から,3台のコールドヘッドとも36 rpmのときに,4.2 Kの冷凍能力がもっとも大きな値を示した。その大きさは,S→M→Lの順番でコールドヘッドサイズの大きさに依存した。Lサイズの冷凍能力の最大値は0.95 W,このときの%カルノーは3.5%であると計算された。これは2 kWクラスの圧縮機で動作する4 K冷凍機の世界最高値である。
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