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2022 年度 実施状況報告書

インバータ駆動交流電動機の常時トルク監視法と故障診断への応用

研究課題

研究課題/領域番号 22K04060
研究機関独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構職業能力開発総合大学校(能力開発院、基盤整備センター)

研究代表者

山本 修  独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構職業能力開発総合大学校(能力開発院、基盤整備センター), 能力開発院, 教授 (00648925)

研究分担者 平原 英明  独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構職業能力開発総合大学校(能力開発院、基盤整備センター), 能力開発院, 准教授 (50649209)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード誘導電動機 / トルク推定 / 漂遊負荷損 / 固定子鎖交磁束 / インバータ
研究実績の概要

本研究は、運転中の交流電動機端子間の電圧と電流の波形計測情報から電動機のトルクを高精度に常時トルク監視しながら各種の故障を検知できる手法を開発するものである。
本年度は、改良型のトルク推定アリゴリズムを開発し実験によってその妥当性を明らかにすることができた。技術的な貢献は次のとおりである。(1)位置速度センサレス制御技術を導入することで、トルク計のみならず速度計の設置も不要にした。(2)効率改善や速度範囲拡大を目的として磁束レベルを可変する運転を伴う電動機への適用を可能にした。(3)我が国や欧米の電動機特性算定法に関する標準規格に見られる百分率漂遊負荷損の仮定値を用いることなく、一般的な無負荷試験と電動機銘板情報からモータ個々の特性を反映した百分率漂遊負荷損の推定値を求める新規な手段を考案した。
上述した改良型トルク推定アルゴリズムを0.4kWの供試機に適用した実施例(トルクの推定値と実測値の比較)に基づいて、正弦波駆動時、非正弦波駆動時(方形波駆動時、PWM(パルス幅変調)駆動時)の何れの場合においても、定格速度、中速度、低速度(磁束レベル低減時を含む)の全速度域で±1%のトルクの推定精度を達成することを確認した。また、漂遊負荷損によるトルク減少分の定式化に際しては、漂遊負荷損がトルクの二乗に比例するモデルよりも、漂遊負荷損が回転子鎖交ベクトルを基準としたときのトルク分電流の二乗に比例するモデルの方が、トルク推定精度を向上できることを確認した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初目標であった誘導電動機のための改良型のトルク推定アルゴリズムの構築できたことから概ね順調であると考えている。
当初計画以上に進展した点は、次年度以降の実験検証に用いる誘導電動機の試作を完了したことである。この電動機は、分解組立を行えるかご形誘導電動機をベースにしたものである。固定子巻線の巻線替えによって一極分のコイルから中間タップを外部ボックスに引き出し、それらの端子間をクリップで短絡できるようにすることで、「健全な固定子の状態」と「故障した固定子の状態(6ターン分のターン間短絡)」とを運転中に切り替えることを可能にしている。さらに、回転子に機械加工を施して「健全な回転子」「バー切れ回転子」「エンドリング損傷回転子」の3通りの回転子を付け替えることで、6通りの複合故障状態を具現できるようにしている。これは次年度に予定している故障検知の研究に活用する予定である。
当初計画より遅れ居ている点は、温度変化による固定子抵抗変動をリアルタイムで補償するシステムの構築が行えていない点である。

今後の研究の推進方策

前年度に開発した改良型トルク推定アルゴリズムは誘導電動機に対する手法であり、永久磁石同期電動機などその他の交流電動機に対しては適用できない。(1)トルク計のみならず速度計の設置も不要、(2)磁束レベルを可変する運転を伴う電動機への適用が可能、(3)モータ個々の特性を反映した百分率漂遊負荷損を推定可能、という3つの技術的特長を失わずに、誘導電動機と永久磁石同期電動機の双方に適用可能な改良型ユニバーサルトルク推定アルゴリズムを開発する必要がある。
今年度製作したかご形誘導電動機(各種複合故障を具現できる)に対して改良型ユニバーサルトルク推定アルゴリズムを適用し、トルク推定値の周波数スペクトル特性から各種の故障を検知できるか否かを実機検証する。並行してトルク計によるトルク実測値の周波数スペクトル特性からどのような単体故障および複合故障の検知が可能であったかも検証し、トルクの推定値を故障診断に用いる長短を明らかにする必要がある。
工場試験現場におけるトルク推定精度を向上できるよう、温度情報に基づいて固定子抵抗の変動を正確に把握するシステムを構築する必要がある。
また、低分解能の電圧電流計測によっても、トルク推定精度と故障検出機能を劣化させない方法の開発も実用化に向けては重要な課題であると考えている。

次年度使用額が生じた理由

当初高周波PWM(パルス幅変調)制御インバータを含めた専用ディジタル制御装置を整備しようと計画していた。しかし、まずはスイッチングノイズやデッドタイムの影響のない基礎特性を把握する必要があると判断し、既存のリニアアンプを使って検証実験を開始したため、予定していた装置の購入が先送りとなった。また、学務との調整がつかなかったことから予定していた国際会議への論文投稿が叶わなかった。これらの理由により、次年度使用額が生じた。
提案法の実用性を示すためには高周波PWMインバータを用いた実験は不可避であるため、次年度以降に整備を進める計画である。また、次年度は国際会議で研究成果を発表すべくスケジュール調整を図っており、既に1件の査読用ダイジェスト原稿の投稿を行っている。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022 その他

すべて 学会発表 (1件) 備考 (1件)

  • [学会発表] 銘板値を利用した漂遊負荷損推定に基づく速度計およびトルク計を用いない誘導電動機のトルク推定2022

    • 著者名/発表者名
      山本 修、平原 英明
    • 学会等名
      電気学会モータドライブ/回転機/自動車合同研究会資料
  • [備考] 山本 修 職業能力開発総合大学校

    • URL

      https://www.uitec.jeed.go.jp/schoolguide/teacher/t00041/

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公開日: 2023-12-25  

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