研究課題/領域番号 |
22K04070
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
丸田 英徳 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (00363474)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 電力変換器 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、電力変換器のモデルベースの制御手法とデータ駆動による異常検知手法の融合することにより、その性能を維持しつつ安定的な運用を行う手法を開発することである。そこで、本研究においては、制御対象を電力変換器の一種であるDC-DCコンバータとし、モデルベースの制御手法として、データ駆動との相性がよいモデル予測制御を採用する。異常検知手法のためには、異常かどうかを判定するための指標が必要となる。この指標として、DC-DCコンバータに用いられている電気素子のパラメータ値に着目し、それらを制御状態のまま推定し、モニタリングすることで、異常検知の判定を行うことを検討する。モデル予測制御における問題点として最適化問題の演算量の大きさがある。直接的な最適化を実行するにはスイッチング周期以内での演算が必要となるが、従来手法では、演算能力不足の解決のため、事前に演算を行っておき必要に応じて結果を読みだしたり、制御入力候補を絞り込み演算量を削減する方法などが提案されている。事前に演算を行う手法では、モデルパラメータ推定の結果をモデル予測制御に反映することができない。よって、制御入力の分解能を動的に変動することで、少ない制御入力候補による最適化問題の演算量を抑制しつつ制御を行う動的量子化法を採用し、直接最適化によるモデル予測制御をプロトタイプの実験回路により実現した。また、異常検知のためのモデルパラメータ推定について、DC-DCコンバータの状態空間モデルとその線形近似による推定手法を検討した。この手法では特殊な信号などを必要とせず、モデル予測制御時に観測・演算情報のみによりコンバータの素子値を推定することを可能としている。これらの手法を組み合わせることで、DC-DCコンバータを運用しつつ、そのパラメータを推定し、推定結果を随時モデル更新に反映させる一連の仕組みの基礎的な部分が構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究に必要となる制御手法と推定手法については、その基礎的な部分は確立できた。また、実験回路を用いた実機による基本的な部分の検証は実現できた。また、特に推定手法の部分については、推定精度の問題があるために、精度の高い推定手法を今後確立する必要があることが確認された。精度については、モデルの近似による影響と比較的少ない情報による推定の影響が重畳されていることが原因と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
現時点では、データによる影響及びモデルの線形近似による影響が、モデルパラメータの推定精度の問題点として挙がっている。これらの影響を補正するために、機械学習などの手法を取り入れることを検討する。また、現在の推定手法は、線形演算のみで実現されており、精度に問題は残るものの、演算負荷が比較的低いという利点がある。そのため、演算負荷の高い機械学習と演算負荷が低い現在の手法をどのように組み合わせて運用すれば効果的かなどについても検討を行う。
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