研究課題/領域番号 |
22K04071
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
迫田 達也 宮崎大学, 工学部, 教授 (90310028)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 水トリー / 残留電荷法 / インジェクション / 区間標定 |
研究実績の概要 |
22kV地中線路において,乾式架橋方式(E-E)CVTケーブルの絶縁体中の水トリーの発生が散見されている。現在,22 kV用ケーブル中の水トリーは残留電荷法により検出しているが,水トリー劣化部の区間標定はできない。水トリーケーブルと健全ケーブルが混在する配電線網において,水トリー劣化区間を特定することができれば改修コストを低減できる。 そこで,従来の交流ステップ昇圧残留電荷法による水トリー電荷検出時に,ケーブルにクランプしたインジェクション(IJ)コイルでケーブルに高周波電流/電圧パルスを誘導して交流電圧によって水トリー部から放出される残留電荷の一部を搬送することで,水トリー長を反映した信号を計測できること,また未劣化ケーブルを含む3本のケーブル構成において,接地抵抗に関係なくケーブル区間毎に存在する水トリーケーブルの区間標定が行えることを明らかにした。 また,水トリー劣化ケーブルと健全ケーブルからなる亘長100m以上でも水トリー区間標定が可能なこと,水トリーケーブル2本と健全ケーブルでの組合せでも位置標定できること,複数IJパルスを発振することでSN比を改善できること等を明らかにした。加えて,インジェクションコイルによる発振周波数及び電流値について明らかにすることができた。さらに,分岐材が含まれるケーブル構成での対応についても検討を開始した。その結果,分岐材存在下でも水トリー劣化区間の標定が可能であることを示した。ただし,水トリー劣化ケーブルが複数存在している場合に,どの劣化ケーブルから搬送された残留電荷信号か判別できない課題が確認された。この問題を解決するために,ステップ昇圧を組合わせた位置標定を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究提案手法を水トリーの検出並びに位置標定に適用するためには,(a) 正弦波状電流パルスによる水トリー起因の残留電荷の搬送機構,(b) 残留電荷搬送における正弦波状電流パルスの周波数(パルス幅)と電流値依存性,(c) 残留電荷を含む電流パルスの進行波と反射波の特性,を明らかにする必要がある。 (a)~(c)の課題の解決状況は,を以下のとおりである。 課題(a) :水トリー長及び水トリー分布,密度の異なる数種類の水トリー劣化ケーブルを用いて,誘導電流による残留電荷の搬送を比較している。その結果,残留電荷法と同様に,水トリー長や分布・密度が反映された残留電荷を本研究提案手法でも計測できることを明らかにした。 課題(b) :周波数(パルス幅)と誘導電流パルスの強度によって,残留電荷信号の強度が左右されることを確認した。また,水トリー区間の位置標定のためのインジェクションコイルによる発振周波数及び電流値の最適値を検討している。 課題(c) :劣化ケーブルと長さの異なる健全ケーブルとの組合せで残留電荷を含む電流パルスの進行波及び反射波の特性に鑑み,水トリーケーブルの区間標定が行えることを明らかにした。 以上のことから,順調に研究は進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に,分岐材が含まれるケーブル構成においても本研究提案手法により水トリーケーブル区間標定が可能か検討を開始している。これまでに,ケーブルの中間接続材(Y分岐材)が存在するケーブル構成下でも区間標定の可能性が示すことができている。今後,2022年度に引き続き,(1) Y分岐材及び直線接続材が区間標定に与える影響の評価及び改善策に対する研究を進める。さらに,課題(a)-(c)について,以下の研究を行う。 (a)水トリーケーブルの水トリーを観察した結果,水トリー長が短いことに加えて,水トリー発生密度が低くなっていることが確認された。また,ステップ昇圧法により確認したところ,残留電荷信号が大きくなる水トリー放出電圧は5kV以下で,水トリーが経年により乾燥・消失していることが確認された。そのため,人工的に水トリーを作製(現有ケーブルの絶縁体と遮蔽層を取り除いた上で加熱した塩水に浸漬させて高密度水トリー生成部を作製)し,残留電荷信号の変化・影響を確認する。 (b)インジェクション電流発信源を変えて,従来よりもより大きなインジェクション電流を誘導してその影響を確認する。これにより,実ケーブルに適用可能なケーブル長を検討する。 (c)これまでは水トリー劣化ケーブルの長さを変えて実験を行っていたが,今後は水トリー劣化ケーブルと健全ケーブルが混在するケーブル構成において,健全ケーブルの長さを変えた場合の残留電荷信号の変化・影響を明らかにする。 さらに,残留電荷信号の検出下限値を改善するために,インジェクション電流を~10発連続発振して残留電荷信号を積算計測する技術についても検討を進める。
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