研究課題/領域番号 |
22K04075
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
高尾 智明 上智大学, 理工学部, 教授 (30245790)
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研究分担者 |
中村 一也 上智大学, 理工学部, 教授 (00407339)
福井 聡 新潟大学, 自然科学系, 教授 (70293199)
小川 純 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (60377182)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 高温超伝導コイル / クエンチ / 安定化 |
研究実績の概要 |
絶縁された高温超伝導線を用いるコイルに200A以上を安定に流せる技術を得る見通しを立てるため、令和5年度は主に以下を実施した。 クエンチ検出の高感度化及び高クエンチ耐性化に関する研究としては、ホットスポット(HS)温度の低減法として昨年度に提案した銅テープ共巻き法を小型YBCO超伝導コイルに適用し、その有効性を実証した。具体的には、50Kに冷却したコイルに例えば直流電流105Aを通電し、そして小型ヒータに通電した。その結果、コイルの一部分は常伝導転移するものの、その後に共巻きされた銅テープに電流が転移するため、コイルは超伝導状態に復帰することが実験的に確認できた。そして、銅テープ厚(標準40ミクロン)を2倍にすることにより、HS温度を75Kから15K程度下がることも確認された。 また、変動磁界損失および抵抗領域における発熱に対する抜熱を高めるコイル構造材料の研究として、YBCOコイルの巻線部を模擬した昨年度までの巻線パックを元に、3次元的に対称となるよう改造を施した。そしてコイルパックを77Kまで冷やし、YBCOテープの線間に挿入した小型ヒータによって局所発熱を加えた際の温度上昇を測定した。例えば、0.3Wのヒータ入力に対して抜熱が悪い条件では約8Kの温度上昇が生じる結果であった。そして、3D有限要素法を用いてこの実験条件を模擬した数値解析を行い、試験と解析は概ね一致し、特に定常状態では良い一致を見た。 さらに、高熱伝導なイオン液体で超伝導コイルを含浸することにより、コイルの熱的安定性を高める研究としては、試験治具を作成して予備的な試験を実施し、令和6年度の本格的な測定に向けて準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの影響を受けて、令和4年度は徐々に実験を始めた状況であったため、計画した通りのスケジュールでは試験を実施できず、やや遅れが生じた。 それ以上に遅れが大きくなることは令和5年度には生じなかったが、令和4年度における遅れがそのまま継続した状態である。
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今後の研究の推進方策 |
クエンチ検出の高感度化及び高クエンチ耐性化に関する研究としては、ホットスポット温度の低減法として提案している銅テープ共巻き法を小型YBCO超伝導コイルに適用し、非含浸コイルでは有効性の見通しが得られつつある。ただし、これは一つのコイルにおいて限られた通電電流におけるデータのみである。そのため、今後は別条件においても銅テープ共巻き法が有効であるか検証してゆく。具体例としては、コイルに用いるYBCO線として臨界電流が異なる線を用いる、非含浸コイルとエポキシ含浸コイルとの比較、共巻きする銅テープやコイルの発生抵抗の比率を変化させる、クエンチ検出電圧を変化させる、などである。 また、変動磁界損失および抵抗領域における発熱に対する抜熱を高めるコイル構造材料の研究としては、3次元的に対称となるよう令和5年度に改造を施した巻線パックを用いて試験データを蓄積させてゆく。例えば、巻線パックにおけるYBCO線の枚数、YBCO線を固定する面圧などを変化させて伝熱状況を変えた条件での測定を行う。あわせて、3D有限要素法を用いてこの実験条件を模擬した数値解析も高度化させる。巻線パック各部(YBCO線材間、YBCOと左右の押さえブロックなど)の接触面における接触熱抵抗を評価し、解析に組み込むことにより、これまで以上に精度の高い数値解析を行う計画である。 高熱伝導なイオン液体で超伝導コイルを含浸することにより、コイルの熱的安定性を高める研究については、令和5年度に試験治具を作成して予備的な試験を実施したので、今後は本格的な測定を行うとともに、イオン液体の基礎物性の把握に努める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究がやや遅れている状況を取り戻すため,来年度に行う測定の準備を前倒しで今年度に行った。そのため,超伝導コイルを準備する必要があり,その線材などの購入に次年度の予算を使用した。
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