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2022 年度 実施状況報告書

適応信号処理による気象用フェーズドアレイレーダの3次元雨量高精度推定手法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 22K04121
研究機関電気通信大学

研究代表者

菊池 博史  電気通信大学, 宇宙・電磁環境研究センター, 助教 (40783105)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード気象レーダ / 地上雨量推定 / 高解像度化 / 圧縮センシング
研究実績の概要

本課題で提案する技術は,次世代の気象レーダとして期待される大型の気象用フェーズドアレイレーダへの適用を目的とし,三つの研究課題に相補的に取り組む.一つ目は気象レーダの固有の欠点を解決する鉛直方向の分解能の向上を目的として,新たな適応信号処理を検討し,実用可能なディジタルビームフォーミング手法として発展させる.二つ目はレーダ雨量と地上降水量との誤差を最小化するために、欠点である水平方向の地上雨量計のデータ点の不足を信号処理技術の圧縮センシングや機械学習を応用した信号処理アルゴリズムを用いて空間的に補間(予測)するアルゴリズムの開発を行う.三つ目はレーダ雨量の高精度化を目的としてレーダデータから雨量に変換する際の関係式(Z-R関係式)をリアルタイムに更新するアルゴリズムの開発を行う.
本年度は、フェーズドアレイレーダの鉛直方向の分解能を目的として、圧縮センシング(基底追跡ノイズ除去(BPDN))を用いた開口径を疑似的に拡大する方法について検討した。BPDN法はアンテナ素子数が少ない状況(アンテナ素子が疎に配列)でも、アンテナ性能を維持し、アンテナ開口径を疑似的に拡大できる可能性を示す一方、適応信号処理手法の実用化のボトルネックとなる観測時のノイズの影響を低減させることが分かった。
地上雨量データの水平分解能の向上に対しては、本年はまず、地上雨量計及びフェーズドアレイレーダのデータを用いた、Z-R関係の時間変化について検討した。レーダ観測範囲内の積乱雲についてZ-R関係を個別に導出し、逐次的にZ-R関係を更新することで地上雨量推定精度が改善することが分かった。
Z-R関係のリアルタイム導出方法の検討に関しても同様に、逐次的なZ-R関係の導出手法を確立し、地上雨量の予測に利用するための基礎検討を行った。今後は、上記の成果を基盤として包括的に研究を進める予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年は特にZ-R関係のリアルタイム導出方法の検討に関して、フェーズドアレイレーダの実機のデータを用いて解析を行った。Z-R関係は気象現象ごと(対流性,層状性,台風など)に異なるが,既存システムでは固定された値を用いていることが問題となっている.つまり気象現象毎(ひいては降雨セル毎に)適切なZ-R関係を導出することが可能となれば,気象レーダから推定する地上雨量は格段に向上する。本年度に行った解析結果を用いて、各雨量計設置地点でのZ-R関係をリアルタイムに導出する手法を確立した。さらに導出されたZ-R関係を降雨セルごとに求めることで、降雨強度の推定精度が向上することを統計的に示したため、研究を進めるうえでの基幹的なデータ解析が終了したと考えている。

今後の研究の推進方策

今後はZ-R関係は地上雨量計が存在する地点では正しい値となることが予測されるがその空間代表性に関しては検討の余地があるため、Z-R関係はどの程度の空間分布(もしくは降水セルの形状等も考慮)で利用可能かどうかについても検証する必要がある.検証には時間分解能1分で地上雨量及び雨滴粒形分布が推定可能な光学式ディストロメーターを用いる.鉛直及び水平方向に高解像度化された地上雨量及びレーダデータを統合して,リアルタイムにZ-R関係を導出することで,結果として高精度3次元降雨量推定を可能とする.
また、レーダの鉛直分解能の高解像度化においては、実データを利用した検討を行う。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2022

すべて 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)

  • [学会発表] Observations of Precipitation Cores with X-band Dual Polarized Phased Array Weather Radar and LF Band Lightning Location System2022

    • 著者名/発表者名
      H. Kikuchi, Y. Nakamura, E. Yoshikawa, T. Morimoto, T. Ushio, and Y. Hobara
    • 学会等名
      2022 URSI-Japan Radio Science Meeting
    • 国際学会
  • [学会発表] igh Temporal Resolution Observations of Precipitation Cores with Dual Polarized Phased Array Weather Radar and LF Band Lightning Location System2022

    • 著者名/発表者名
      H. Kikuchi, E. Yoshikawa, Y. Nakamura, T. Ushio, T. Morimoto, and Y. Hobara
    • 学会等名
      17th International Conference on Atmospheric Electricity
    • 国際学会
  • [学会発表] 気象用二重偏波フェーズドアレイ気象レーダと地上雨量計による降雨強度推定の高度化2022

    • 著者名/発表者名
      馬場直人,菊池博史,芳原容英,牛尾知雄
    • 学会等名
      第101回日本大気電気学会
  • [学会発表] 気象用二重偏波フェーズドアレイ気象レーダと LF 帯雷放電標定装置を用いた雲内粒子と放電過程の時系列変化2022

    • 著者名/発表者名
      鹿倉周太郎,菊池博史,芳原容英,吉川栄一,中村佳敬,森本健志,牛尾知雄
    • 学会等名
      第101回日本大気電気学会

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公開日: 2023-12-25  

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