研究課題/領域番号 |
22K04125
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
堺 健司 同志社大学, 理工学部, 准教授 (40598405)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 磁気ナノ粒子 / 交流磁化率 / 粒径分布 / 磁気免疫検査 / 軟磁性体 / 粉砕 |
研究実績の概要 |
本研究は,磁気免疫検査に最適な磁気ナノ粒子の創製に向けて,磁気ナノ粒子の様々なパラメータを変化させた場合に,磁気ナノ粒子の交流磁化率がどのように変化するかを明らかにし,交流磁化率の変化を利用して免疫反応を検出する磁気免疫検査法の高感度化を実現できる磁気ナノ粒子の開発を目指すものである。 本年度は,磁気ナノ粒子に使用する磁性体材料に着目し,これまで一般的に広く使用されている酸化鉄ではなく,鉄と各種添加物の合金である高透磁率材料の軟磁性体を磁気ナノ粒子の磁性材料として使用することを検討した。軟磁性体は酸化鉄よりも透磁率が高く,外部磁場に対して発生する磁場も大きくなり,磁気免疫反応検出の高感度化が期待できる。しかし,現状工業的に生産されている軟磁性体粒子の最小粒径は数μm程度であり,ナノ粒子の軟磁性体を得ることは難しい。そこで,本研究では軟磁性体粒子を粉砕によりナノ粒子化することを試みた。 粉砕には遊星ボールミルを使用し,ボールミルで使用するビーズ径を0.5 mmとし,湿式・乾式,混合時間,ミルの回転速度などの粉砕条件を変え,一般的に使用されている軟磁性体のFe-Si粒子を粉砕した。その結果,湿式混合を用いた場合に最も粉砕が進み,混合時間や回転時間には大きく依存しないことが明らかになった。また,X線回折装置により結晶構造を確認した結果,粉砕後も同じ結晶構造を保っていることがわかった。しかし,本年度行った粉砕条件下ではナノオーダーの磁性粒子の存在量は少なく,粉砕条件の最適化や粉砕されやすい軟磁性体の探索が必要であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和5年度に行った軟磁性体の粉砕による磁気ナノ粒子の作製は当初計画していた通りであったが,粉砕条件を変化させてもナノ粒子化が進みにくく,免疫反応検出に適したナノオーダーの磁性粒子を十分に得ることが難しかった。また,令和4年度から取り組んでいる電気泳動による磁気ナノ粒子の信号取得についても,ナノ粒子に起因する信号が取得できなかった。そのため,現在の進捗状況はやや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,引き続き軟磁性体を粉砕し高透磁率材料の磁気ナノ粒子作製を行う。粉砕容器の回転数,粉砕時間,粉砕する軟磁性体の種類などを変え,ナノオーダーの軟磁性体粒子を作製可能な条件を明らかにする。また,作製した軟磁性体粒子を高分子でコーティングし,市販の磁気ナノ粒子と同じ構造を持つ軟磁性体の磁気ナノ粒子を作製する。作製した軟磁性体の磁気ナノ粒子の状態をTEMで観察し,高分子でコーティングされた磁気ナノ粒子が合成されているかを確認するとともに,直流磁化特性と交流磁化特性を評価して酸化鉄系の磁気ナノ粒子よりも高い透磁率を示すか,交流磁化率の周波数特性が一般的な磁気ナノ粒子と同じような特性になっているかを確認する。 また,粉砕した磁気ナノ粒子の粒子サイズを分離して高分子をコーティングした磁気ナノ粒子を作製し,磁化応答を評価することで,高分子内磁性粒子の粒度分布により磁気ナノ粒子の特性がどのように変化するかも明らかにする。 電気泳動による磁気ナノ粒子の磁気信号検出については,電気泳動により移動する磁気ナノ粒子が発生する磁気信号が大きくなるであろう条件下で実験を行う。具体的には,電気泳動法で印加する電圧を高くする,磁気ナノ粒子の濃度を濃くするなどである。また,電気泳動時の重要なパラメータの1つである磁気ナノ粒子溶液のゼータ電位を測定し,溶液のpH調整などでゼータ電位を変化させ,ゼータ電位と磁気ナノ粒子溶液の電気泳動の状態や,交流磁化特性の変化を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は研究代表者の異動により実験の立ち上げなどに時間を要し,市販の磁気ナノ粒子を用いた測定が当初計画よりも少なくなり,磁気ナノ粒子の購入量が予定より少なかったため残額が生じた。従って,本年度生じた残額は次年度に磁気ナノ粒子を購入する費用として使用する予定である。
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