研究課題/領域番号 |
22K04129
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
西山 道子 創価大学, 理工学部, 准教授 (60509769)
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研究分担者 |
井川 寛隆 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 主幹研究開発員 (10358690)
渡辺 一弘 創価大学, 理工学部, 教授 (40240478)
関 篤志 創価大学, 理工学部, 教授 (70226629)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 腐食検出 / 光ファイバセンサ / 表面プラズモン共鳴 |
研究実績の概要 |
本研究は、水素ガスリーク、温度、湿度・腐食、加速度を検出するセンサを、ヘテロコア光ファイバで開発し、これらの多種の情報を取得できる実用性の高いマルチモーダル光ファイバセンシングシステムを確立することで、水素航空機の運用効率化の実現を目指している。 2022年度前半では、ヘテロコア光ファイバによる各種センサの基盤となる屈折率センサの高感度化に取り組んだ。表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonane: SPR)、局在表面プラズモン共鳴を利用するにあたり、その材料と形態の選定を検討し、酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide: ITO)の薄膜による光ファイバ屈折率センサを採用する目処がたった。ITO薄膜による屈折率センサの開発、また結露を検出するAu薄膜ヘテロコア光ファイバセンサの開発に取り組んだ。ITO薄膜のヘテロコア光ファイバ外周へのスパッタリング成膜に成功し、近赤外帯域における屈折率感度向上を実験的に明らかにした。また、AuとTa2O5の2層多層膜薄膜を用いたヘテロコア光ファイバセンサでの結露検出性能も実験的に明らかにした。 2022年度後半では、金属腐食検出センサの確立を目指し、アルミニウム薄膜をAu/Ta2O5多層膜の外周に成膜し、その外周のアルミニウム腐食の過程を、SPRを利用したヘテロコア光ファイバでの検出を試みた。その結果として、アルミニウム薄膜を3 nmとすることで、近赤外帯域でのSPR吸収を確認した。更に、塩分を含む海水に浸漬させることで腐食を加速的に発生させた際の腐食過程を、SPR吸収波長のシフト、近赤外光の光損失の両側面で検出が可能であることが実験的に示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【表面プラズモン共鳴を利用した高感度センサの開発】ヘテロコア光ファイバ屈折率センサの高感度化のための材料の選定の結果、ITO薄膜を採用し、またITO薄膜をヘテロコア光ファイバ外周にスパッタリング成膜する方法を確立した。その結果、表面プラズモン共鳴を利用した屈折率センサの性能を決定するSPR共鳴波長を制御するためのITO膜厚の調整を可能とし、近赤外光を利用して高感度な光ファイバ屈折率センサを実現の可能性を実験的に確立した。【光ファイバによる結露・塩分センサの開発】結露に対して反応することをAu/Ta2O5の2層多層膜を利用したヘテロコア光ファイバSPRセンサにて実験的に検証した。また、塩分による金属腐食検出のためのセンサ設計を実施し、Au/Ta2O5/Alの3層多層膜によるヘテロコア光ファイバSPRセンサによるアルミニウムの腐食の応答性を実験的に検証した。塩分センサの開発を計画していたが、目的となる金属腐食の応答を確認し、当初の目的を遂行することができた。
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今後の研究の推進方策 |
前述の通り、2022年度の研究計画の予定は概ね完了した。今後は、これまで研究開発されている水素ガスセンサ、加速度センサ、温度センサと、前年度開発を行った結露・腐食センサを、LED光源でのマルチモーダル光計測システムを開発する。また昨年度高感度化されたITO薄膜による光ファイバ屈折率センサを利用して、水素ガスセンサの好感度化も実験的に検討を行う。光強度変化のみで測定される多種のヘテロコア光ファイバセンサを、同一光ファイバ線路上で識別するため、各センサの時間応答性から抽出する多重化技術を確立する。また、ヘテロコア光ファイバ加速度計を、LED光源から光ファイバへのカップリングロスが比較的小さく、安定した伝送路の曲げ耐性マルチモードファイバを用いて開発を行い、センサ多重化による対信号雑音比を向上させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
設備備品費、消耗品費はほぼ予定通り執行した。 2023年度の経費に繰り越して有効利用する。
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