研究課題
初年度の研究において、以下の成果が得られた。1.パラメータ変動システムに対して、状態の微分値および性能に関係する信号を状態空間に含めるように信号空間の拡大を行い、システムのダイナミクスとこれら信号間の関係式を拡大された空間上の超平面と見なすことによって、幅広い性能仕様の最適化問題をこの超平面における静的な最適化問題に置き換えることに成功した。これによって、Lagrange乗数法でロバスト性能問題を扱えるようにできた。2.このアプローチは従来のロバスト性能条件によくあらわれる不確かパラメータのベキを避けることができる。それによって、パラメータ変動システムに対してより保守性の低いロバスト性能のための条件を導出することに成功した。具体的には、保守性の低い新しいロバスト周波数応答仕様、ロバスト領域極配置仕様に対する条件を導けた。以上によって、保守的でないロバスト制御設計の枠組みの足場を強固なものにした。3.導出された条件は、複数個の頂点システム(不確かパラメータがポリトープの頂点で値を取る場合のシステムのこと)に関する、双線形行列不等式で与えられるため、従来の変数消去法や変数変換法で解くことはできない。そこで、ロバスト周波数応答仕様を最適化できる制御器を設計できるようにするために、メタ―ヒューリスティクスに基づく、ランダム探索による制御系設計の枠組みを構築した。本枠組みには、探索の成功率を高めるさまざまな工夫が組み込まれている。4.構築された枠組みは、ロバスト性能設計できるだけでなく、各伝達関数の整形を個別に実施可能であるため、制御設計を大幅に簡単化でき、初心者でも使用できるようになっている。5.この設計枠組みによって、ロバスト制御設計技術を大きく前進させた。
1: 当初の計画以上に進展している
計画では2年目に実施する予定のテーマまでほぼ完成させた。
数値例による解析からは、提案法は従来の共通リアプノフ行列手法に比べ保守性を平均して半減できている。これは大きい改善ではあるものの、実際に達成しうる性能限界からはまだ大きい開きが残っている。次年度では、こののギャップをどうすれば縮められるかについて重点的に詰めていく。また、ランダム探索の性格上百パーセントの成功率は保証できないが、成功率を現在の7割からさらに向上させていく必要がある。そのために、様々なメタヒューリスティック手法を組み合わせることを調べる予定である。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 5件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件)
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