研究課題/領域番号 |
22K04167
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高井 重昌 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (60243177)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 制御工学 / 離散事象システム / スーパバイザ制御 |
研究実績の概要 |
実システムの多くは時間に関する制約のもとで動作するリアルタイムシステムとみなせる.本研究では,非決定性オートマトンでモデル化されたリアルタイムシステムとその制御仕様に対するスーパバイザ制御理論を確立することを目的としている. 非決定性オートマトンでモデル化されたシステムと制御仕様に対する一般的な制御問題として,制御されたシステムと制御仕様が双模倣となるようなスーパバイザを構成する双模倣制御問題がある.双模倣制御問題の解となるスーパバイザの存在性の検証,および存在する場合のスーパバイザの構成法の計算量は,対象システムと制御仕様の状態数に関して指数オーダである.しかし,制御仕様が決定性のオートマトンでモデル化される特別な場合には,双模倣制御問題の解となる決定性のスーパバイザの存在性が多項式オーダで検証できることが,研究代表者の従来研究で示されている.そこで本研究では,決定性のオートマトンでモデル化された制御仕様に対して,双模倣制御問題の解となる非決定性のスーパバイザが存在するならば,必ず決定性のスーパバイザも存在することを明らかにした.この結果により,制御仕様が決定性のオートマトンでモデル化される場合,双模倣制御問題の解となるスーパバイザの存在性が,多項式オーダで検証できることが示された. この得られた成果は、非決定性オートマトンでモデル化されるようなシステム対する制御系設計の基礎理論の構築に貢献するものである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初,令和4年度では,時間付き非決定性離散事象システムとしてモデル化された制御対象とその制御仕様に対して,双模倣制御問題の解となるスーパバイザが存在するための必要十分条件を導出し,導出した条件の検証およびスーパバイザの構成のための計算量を解析し,その評価を行うことを計画していた. 実際には,まず,時間の経過をモデルに含めない非決定性離散事象システムとしてモデル化された制御対象に対し,その制御仕様が決定性のオートマトンでモデル化される特別な場合において,双模倣制御問題の解となるスーパバイザの存在性が,多項式オーダで検証できることを明らかにした.この成果は,制御仕様が決定性である場合は,スーパバイザは決定性のものに限定でき,その存在性の検証のための計算量を指数オーダから多項式オーダに下げることができることを示したものであり,インパクトファクターが6.15で,システム制御理論の分野でのトップクラスの論文誌であるAutomaticaに掲載されている. また,時間付き非決定性離散事象システムとしてモデル化された制御対象とその制御仕様に対する双模倣制御問題に対しても,その解決への目途が立っている. よって,研究はおおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
本研究では,非決定性オートマトンでモデル化されたリアルタイムシステムとその制御仕様に対するスーパバイザ制御理論を確立することを目的としている.一方,現実の多くのシステムはネットワーク化され,分散的に制御・管理されている.このようなシステムのネットワーク化に対応できる分散スーパバイザ制御理論の確立も喫緊の課題である. そこで,まずは時間の経過をモデルに含めない非決定性離散事象システムを対象とし,複数のローカルスーパバイザからなる分散スーパバイザによる双模倣制御に取り組む. その後,時間付き非決定性離散事象システムとしてモデル化された制御対象とその制御仕様に対して,双模倣制御問題の解となるスーパバイザが存在するための必要十分条件を導出し,スーパバイザの一般的な構成法を開発する.そして,導出した条件の検証およびスーパバイザの構成のための計算量を解析し,その評価を行う.双模倣制御問題の解となるスーパバイザが存在しない場合には,双模倣等価性という制御要求を緩和する必要がある.そこで,制御された対象システムの振舞いが制御仕様に模倣されることのみを要求する模倣制御問題についても考察する.特に,スーパバイザの最適性の指標である許容性に関して最適な,最大許容スーパバイザの構成法を開発する. これらの制御問題に加え,制御系の信頼性を高めることを目的に,システム内での故障事象の生起などを検出するための診断システムに関する研究にも取り組む.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初,計算機シミュレーション用として,令和4年度に計算機の購入を予定していたが,令和4年度の研究成果は,計算機シミュレーションによる検証を必要としない内容であった.また,出張による参加を予定していた研究会にはオンラインで参加し,研究成果の発表を行った.そのため,次年度使用額が生じた.そこで,次年度使用額を,令和5年度において計算機を購入する費用,学会参加のための旅費に使用する計画である.
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