研究課題/領域番号 |
22K04180
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
蓮見 真彦 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60261153)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | pn接合 / 活性化熱処理 / 少数キャリアライフタイム / マイクロ波吸収 |
研究実績の概要 |
トランジスタ、ソーラーセル、フォトセンサなどの半導体デバイスに幅広く用いられるpn接合やMOS構造の駆動には、半導体中の内蔵電位が重要な役割を果たしている。本研究では、pn接合の内蔵電位と実効少数キャリアライフタイム、光誘起少数キャリア再結合速度の関係に着目する。我々が開発した9.35 GHzマイクロ波透過測定システムを用いて、活性化熱処理条件を変えたpn接合試料の評価を行った。 n型単結晶シリコン基板の表裏面にボロン(B)およびリン(P)をイオン注入し、300~700℃の活性化熱処理を施した。試料のシート抵抗および実効少数キャリアライフタイムをマイクロ波透過測定により非破壊・非接触評価した。700℃熱処理試料のシート抵抗は320 Ω/sqから135 Ω/sqへ低下し、実効少数キャリアライフタイムは8.8 μsから172 μsへ上昇した。不純物の活性化と同時にイオン注入時に発生した欠陥のパッシベーションがなされたことをこれらの結果は示している。さらに、NDフィルタを用いて励起光を減光して実効少数キャリアライフタイムの励起光強度依存性を測定したところ、0.1 mW/cm2以下の弱励起領域で実効少数キャリアライフタイムが顕著に増大する結果が得られた。この傾向は熱処理温度の低い試料ほどより顕著になり、試料の欠陥密度との関連が示唆される結果が得られた。 加えて、マイクロ波を利用した新規加熱装置の原理的検証として、2枚の導体板からなる1次元キャビティシステムにマイクロ波を照射したときの吸収率を数値解析するとともに、2.45 GHzマイクロ波発振器に導波管キャビティを取り付けた実験システムを用いて、シリコン基板とアルミ板を導体板としたときのマイクロ波の吸収とシリコン基板の発熱特性を評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に基づき、9.35 GHzマイクロ波透過測定システムを用いて、活性化熱処理条件を変えたpn接合試料のシート抵抗、実効少数キャリアライフタイムおよび光誘起少数キャリア再結合速度の測定・解析を行った。活性化熱処理およびパッシベーション熱処理による実効少数キャリアライフタイムおよび再結合速度の変化について基礎的な検討を行い、当初計画では予期していなかった実効少数キャリアライフタイムの励起光強度依存性と試料の欠陥密度との関連を示唆する新たな知見が得られた。今後、試料の電流電圧特性との関係についてさらなる調査を進める予定である。以上の活動により、研究は概ね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
活性化熱処理およびパッシベーション熱処理による実効少数キャリアライフタイムおよび光誘起少数キャリア再結合速度の変化について検討を行い、試料の電流電圧特性との関係について調査する。欠陥低減処理に重点を置いた測定・解析を行い、内蔵電位下におけるキャリア再結合欠陥の制御、再結合欠陥低減に関する知見を得る。これらの検討を通して、高効率ソーラーセル、高感度フォトセンサ等の設計、開発に有用な知見を示す。
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次年度使用額が生じた理由 |
実効少数キャリアライフタイムの励起光強度依存性評価のため、当初計画していたマイクロ波透過測定システムへの半導体レーザ光源の追加導入を先送りしたこと、および学内事情による研究室の移設作業に伴い、実験装置の稼働停止期間が約3か月あったことによる。さらに、研究室保有の機材を本研究プロジェクトに有効活用したため当初計画よりも少ない額で目標を達成できた。繰越分および次年度分を研究進捗に沿って執行する。
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