研究実績の概要 |
2023年度は、X = P, B, Cなどの軽元素を中心に探索した。その結果、アンチペロブスカイト型新規化合物として、EuPd3P, CePt3P(高圧合成), LaRh3P(高圧合成), CePd3P, YRh3P1-x (x = 0.3~0.4)を発見した。さらに、アンチペロブスカイト関連新規化合物(Mo3Al2C型)として、Li2Pd3P, Na2Pd3P, Li2Pt3Pの合成にも成功した。Na2Pd3Pは、化学量論比から組成をずらすことにより、約6 Kの超伝導を示すことが判明しているが、詳細は現在研究中である。その他の新規化合物として、Mg4Ir7P6 (Mg4Rh7P6型), Na5Ir19P12(Ca5Ir19P12型), Li6Ni16P7 (Mg6Cu16Si7型) CaNiP (AlB2類縁)を合成できた。その他にも、幾つもの構造不明な物質の生成を確認した。三元系A-M-Xに相当数の未発見物質が存在すると考えられる。 また、X = Bとしたときの探索過程で、三元系Ba-Pt-Bに新規化合物が生じることを見出した。この新物質について、純良試料の合成から組成分析、結晶構造解析までの詳細な研究を集中的に行った結果、立方晶系の空間群(I-43m, a = 1.11093(1) nm)を有する新物質Ba6Pt19-xB16-y(x = 1.6, y = 4)を突き止めた。Ba6Pt19-xB16-yは、Pt-Bからなる籠にBa6Pt八面体を収容するという特徴がある新しい構造プロトタイプの物質であった。さらに、この物質が約0.9 Kで超伝導を示すことも発見した。Ba6Pt19-xB16-yは、非対称中心構造を有すること、スピン軌道相互作用が強いPt元素から構成されることから、トポロジカル超伝導体としての候補にもなり得る興味深い物質である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アンチペロブスカイトAM3X (A =アルカリ土類など、M = 白金族など、X = ニクトゲンなど)に対して、バルクコンビナトリアル法による網羅的探索を研究計画に従って実行している。これまで、比較的軽元素であるX = As, P, などについて探索を実施し、その結果として、幾つもの新規アンチペロブスカイト物質を発見できている。また、コンビナトリアル探索の特徴である予期しない発見(2022年度は新規超伝導体Ca2Pt4As3、2022年度は新しい構造プロトタイプ超伝導体Ba6Pt19-xB16-y)もできている。 さらに、バルクコンビナトリアル探索過程で、Naの存在下でグラファイト層間化合物が加速的生成することを予期せず発見した。この発見を元にした研究も展開中である。以上の事から、本研究課題は、おおむね順調に進展していると判断した。
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