研究実績の概要 |
2022年度は当初計画に従い、ナノ結晶GaN膜の物性制御手法の確立とCsPbBr3-xClx膜の製膜条件の確立を目指して検討を行った。 ナノ結晶GaN膜については、スパッタ法による製膜条件が膜特性に与える影響を詳細に検討し、ガラス基板が耐えうる基板温度の範囲で良好な電気的特性(キャリア濃度 8×10^19 cm-3, 0.8 cm2/V/s)を有するナノ結晶GaN膜の形成が可能なことを明らかにした。また、CsPbBr3を光吸収層に用いた受光器の電子輸送層(ETL)にこのナノ結晶GaN膜を適用したところ、450 nmの青色光に対する変換効率の推定値は約29%となった。この値はリファレンスであるTiO2をETLに用いたデバイスの場合(約30%)とほぼ同等であり、デバイスに適用可能なナノ結晶GaN膜の形成ができていることを示している。 CsPbBr3-xClx膜の製膜条件の確立については、メカノケミカル法により合成したパウダーを用いたCsPbBr3-xClx膜の蒸着とCsPbBr3膜へのTbCl3ドーピングおよび水分吸着の影響の検討を行った。PbCl2とCsBrを混合破砕したパウダーを用いた蒸着により、バンドギャップ2.7 eV程度のCsPbBr3-xClx膜の形成が可能であることが明らかとなった。しかし、膜の電気的特性(キャリア拡散長)は比較的小さい値にとどまっており(最大で約150 nm)、より詳細な条件検討が必要であることが明らかとなった。CsPbBr3膜へのTbCl3ドーピングおよび水分吸着の影響の検討においては、適度な水分吸着およびTbCl3ドーピングがCsPbBr3膜のキャリア拡散長を増大させることを見出した。次年度以降、これらの処理をCsPbBr3-xClx膜に適用することにより、良質なCsPbBr3-xClx膜の形成が可能になると考えられる。
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