研究課題
令和5年度はイオン注入法によりリンをドープした白金についてスピントルク強磁性共鳴実験によるスピンホール角の評価や透過型電子顕微鏡による断面観察等をさらに進めた。その結果、リンドープ白金においてはスピンホール角が大きく向上する結果が得られた。このとき、電子回折像の結果から白金はアモルファス化しており、また断面像から白金の膜厚が増加していることがわかった。スパッタ法による作製試料についてはスパッタ時のアルゴンガスと窒素ガスの流量比を調整することで窒素ドープ白金の作製を行った。窒素ドープにおいては酸素ドープに比べ同じ流量比の場合は抵抗率およびスピンホール角ともに増加量が小さいことから、取り込み量が少ない結果となった。このため、今回作製した混合ガスの流量比の範囲においては、抵抗率の結果からイオン注入法により作製した試料においてドープ量が少ない試料の範囲であることが推定され、流量比に対してスピンホール角は単調増加する結果となった。このとき、スピントルク強磁性共鳴実験に加え、スピンポンピングによる評価を行った結果、スピンホール角の増加について同傾向が得られたことから、バルク効果であることを明らかにした。また、スピンホール抵抗率からはこれまでのイオンドープ白金の結果と同様、サイドジャンプが支配的であった。温度依存性測定結果から内因性散乱と外因性散乱に分離した評価を行った結果、イオン注入法と同様に窒素ドープ量の増加に従い外因性散乱の効果が増加する結果が得られた。
2: おおむね順調に進展している
リンドープ白金においてスピンホール角が大きく向上するなどの成果が得られた。また、窒素ドープ白金においてもイオン注入法とスパッタ法との比較結果を得るとともに、スピン流から電流、電流からスピン流の生成に関する比較実験についても実施し相反性があることを確認した。さらに、これらの白金上へ強磁性層を積層化した試料を作製し、磁化反転実験に着手しており、研究はおおむね順調に進んでいる。
イオン注入法においてはさらに別イオン種をドープしスピンホール角の向上を図る。また、スパッタ法においてはより高濃度の窒素ドープ試料の作製を試みる。さらにスピンホール角が増加したイオンドープ白金を用いたスピン軌道トルクによる磁化反転実験を行い、その効果について調べる。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
SPIN
巻: ー ページ: ー
10.1142/S2010324723400246
physica status solidi (RRL) - Rapid Research Letters
巻: 17 ページ: ー
10.1002/pssr.202370011
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巻: 11 ページ: ー
10.1002/adom.202301027