研究課題/領域番号 |
22K04202
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
内田 史朗 千葉工業大学, 工学部, 教授 (50761095)
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研究分担者 |
宮島 晋介 東京工業大学, 工学院, 准教授 (90422526)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 常温接合 / 表面活性化 / 化合物半導体 / 異種材料間接合 |
研究実績の概要 |
異種基板接合は各基板の特性を統合することができ、新しいデバイスの可能性が期待される。本研究では高速電子ビーム (FAB: Fast Atom Beam) 照射時の条件を系統的に検討し、接合サンプルの電気的な低抵抗化に取り組み、その物理的要因を明らかする事を目的としている。 令和5年度は、FAB照射の条件のうち主に印加電圧をパラメータとして接合実験を行った。前半は、前年に引き続き、接合基板としてp-GaAs, p-InP, n-InPを準備し、接合実験を実施した。その結果、p-GaAs//p-GaAs 及びp-GaAs//n-InP の接合では印加電圧を大きくすることで接合界面抵抗を小さくできることが分かった。しかしながら、印加電圧を更に高くすると接合自体が出来ないという課題が生じた。FAB 照射前後での基板表面状態をAFM で測定したところ、FAB 照射時の印加電圧を大きくするとInP の表面粗さが特に増大しており、その粗さを5nm未満にする必要がある事が分かった。 後半は、接合界面材料のバンドギャップエネルギーを狭小化する事で低抵抗化出来ないかを調査した。p-InP基板上に、p-InGaAsを結晶成長した基板を準備し、n-GaAsと接合実験を試みた。その結果、ショットキーライクなI-Vカーブが得られた。しかしながら、FABの印加電圧を大きくすることでオーミックライクな直線に近づく事が分かった。また、新たな接合材料としてGa2O3とSiの接合の準備を進めた。その一環として、東工大宮島研究室では、Facing Target Sputtering (FTS)と Spin-On-Doping (SOD)による高濃度にドープされた p 型 poly-Si 層の形成を検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
様々な組み合わせにより半導体の接合抵抗が低減できる要因を模索したところ、原子ビームの照射強度(装置上では印加電圧)が強い程低抵抗化できるが、強すぎるとバンドギャップエネルギーが低い材料程結合力が弱い為か表面が原子ビームでスパッタされて表面が荒れる事が分かった。また、表面粗さが5nmを超えると接合自体ができないという現象を見出した。次のステップとして、接合界面材料としてバンドギャップエネルギーが低い材料での異極性(p-n)接合で低抵抗化できるか調査を進めており、その兆候が見られる結果がp-InGaAs/n-GaAsの接合実験で得られ、更なる低抵抗化の指針が得られている。また、他の材料系であるSiやGa2O3などの接合の基礎実験準備も進んでおり、新しい材料系での新展開も期待できる状況である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は方針として次の二つの方向性を進める予定である。 1)さらなる接合抵抗の低抵抗化:デバイス応用を念頭に接合界面材料がいずれもバンドギャップエネルギーの小さい組み合わせであるp-InGaAs/n-InGaAsでの接合実験を行う。 2)GaAsやInP以外の材料、例えば、パワーデバイスに最近応用されつつあるGaN、Ga2O3、Siなどの新しい半導体材料での接合実験を進める.
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