研究実績の概要 |
酸化ガリウム(β-Ga2O3)はポストSiC,GaNの次世代パワー半導体として期待されているが、優れた物性値を反映したデバイス特性の実現にはGa空孔,O空孔等に関連した電気的に活性な固有欠陥準位の理解が必要不可欠となる。本研究の2022年度は、光容量過渡分光(SSPC)計測とフォトルミネッセンスの温度依存性(VT-PL)計測を併用して、Siドープしたn型β-Ga2O3(010)単結晶を1000℃で連続的に真空中アニール処理し、O空孔を積極的に導入した際の欠陥準位のアニール挙動を電気的に検討した。 真空中アニール前のas-received状態ではEc-2.20eV, Ev+4.43eVの2つの欠陥準位が支配的であるが、真空中アニール処理によりEv+4.43eV, Ec-3.88eVの2つの欠陥準位が顕在化すること、更なる真空中アニール処理により Ec-3.88eV準位の消滅とともにEc-2.60eVの欠陥準位が新たに生成することを確認した。理論計算の文献データから、Ec-2.20eV準位はGa空孔欠陥, Ev+4.43eV準位はO空孔欠陥, Ec-3.88eV準位は格子間Ga関連の熱的に不安定な欠陥準位であると推定される。また、SSPC計測の測定電圧依存性の実験結果を考え合わせると、真空中アニール時に導入される酸素欠損量に応じて、O空孔欠陥,格子間Ga欠陥,Ga空孔欠陥の欠陥準位が順に生成し、最終的には複合欠陥準位(Ec-2.60eV)を形成しながら内方拡散していく様子を明確に捉えることに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、β-Ga2O3結晶成長後の活性化アニール温度である1450℃~1600℃における欠陥準位のポストアニール挙動(窒素中,酸素中)をPL法,C-V(容量-電圧)法,SSPC法等を併用して多面的・系統的に評価・解析する予定である。更に、イオン照射により点欠陥を強制導入したβ-Ga2O3結晶を温度をパラメータとして連続的にポストアニール処理し、欠陥準位が様々な状態で複合化し熱的に安定な固有欠陥準位を形成する過程を詳細に検討する予定である。
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