研究課題/領域番号 |
22K04210
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研究機関 | 公益財団法人高輝度光科学研究センター |
研究代表者 |
安野 聡 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 産業利用・産学連携推進室, 主幹研究員 (00767113)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 硬X線光電子分光 / 高エネルギーX線 / バンドアライメント評価 |
研究実績の概要 |
本研究は高エネルギー光電子の制御技術と放射光による高エネルギーX線(~30 keV)を組み合わせた数百nmの分析深さを有する新しい光電子分光法を開発し、実際の半導体デバイス構造の電子状態を非破壊で評価する事によって真に求めたいバンド構造を得る事を目的とするものである。 2022年度は、最大20 kVの高電圧印加に対応可能なサンプルステージの開発と20 kV以上の電圧印加が可能で安定性の高い低ノイズ高圧電源の導入を行った。実証実験では励起X線エネルギーを14→20 keVに段階的に引き上げながら、高圧電源と既設のエネルギーアナライザーによる2段階制御方式の光電子の運動エネルギー制御技術の開発を進め、最大で励起X線エネルギー20 keVでの光電子スペクトルの取得に成功した。表層に100nm程度の層を持つSiO2(110nm)/Si基板構造に対して20 keV励起による測定を行ったところ、下層Si基板由来のシグナル(Si 1sピーク)を明確に検出できることを確認した。 次年度はさらに高いX線エネルギーでの検証を進め、最終的な目標である30 keV励起による光電子分光測定技術開発を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定では、実証実験については、既設の小型高圧電源を使用した光電子の運動エネルギー15→10 keVへのエネルギー制御技術開発までを予定し、20 keV以上については、低ノイズ高圧電源と対応可能なサンプルステージの開発と導入までを行う予定であった。一方で予定よりも早くサンプルステージの開発が進んだことから、前倒しで実証実験を進める事ができ20 keV励起によるエネルギー制御実験に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度はさらに20→30 keVと励起X線エネルギーを増加させ、導入した高圧電源による光電子の運動エネルギー10 keV以下への制御とアナライザーと組み合わせた2段階制御方式の技術確立と光電子スペクトル取得の実証実験を行う。さらに次のステップとして、5~30 keV励起エネルギー依存性による深さ方向分析(マルチエネルギー解析)の技術開発と構造が既知な多層構造の実試料(SiCなど)を準備し、実測による分析深さや本技術の有用性の確認と実用化に向けた課題抽出も行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ当初の計画通りに予算を執行したが、新型コロナウィルスの影響で当初予定していた打ち合わせ等が実施できなかったため、予算に余りが生じた。翌年度では外部発表や打ち合わせ等で使用する予定である。
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