研究課題/領域番号 |
22K04211
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
八木 修平 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (30421415)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 中間バンド型太陽電池 / 高効率太陽電池 / 2段階光吸収電流 / 分子線エピタキシー |
研究実績の概要 |
本研究で提案する中間バンドセルとシングルギャップセルのタンデム構造について、詳細平衡モデルによる変換効率の解析を行い、中間バンド(IB)-伝導帯(CB)間の光吸収率およびシャント抵抗の影響を調べた。通常の中間バンド型太陽電池では、最適なエネルギーギャップの組み合わせにおける1sun照射下での変換効率は約46%であるが、IB- CB間の光吸収率を減少させることで著しく減少し、光吸収率が0になるとCB-価電子帯(VB)間エネルギーに相当するシングルギャップセルの変換効率16%に一致した。一方、IBとのトンネル接合を介してVBを接続したシングルギャップセルとのタンデム構造では、IB- CB間の光吸収率の減少に対して変換効率の減少はなく、さらに、中間バンドセルのCB-IB間に1Ωcm^2の小さなシャント抵抗を導入しても、30%以上の変換効率を保つことがわかり、提案のセル構造の有効性が明らかになった。 動作実証実験に向けては、トップセルとして用いる中間バンド材料として、希釈窒化物半導体混晶であるGaAsNおよびGaPNを検討した。試作セルに対し複数波長の光を照射し電流応答を観測した結果、いずれの材料においても微量窒素の添加により形成される中間バンドを介した2段階の光励起による電流生成が生じることを実験的に確認するとともに、レート方程式を基にしたキャリアダイナミクスの解析を行った。詳細な励起波長依存性を調べた結果、特にGaPNを吸収層とした場合、バンド端の低エネルギー側に形成されるテイル準位の存在が、2段階光励起電流の生成に重要な役割を果たすことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
詳細平衡モデルによる動作解析で、本研究で提案する新規セル構造の有効性を示すことが出来た。また、実証実験に向けて中間バンドセル動作に関する基礎的なデータが得られたことで、着実に準備を進めることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
動作実証実験に用いるタンデム構造を結晶成長するとともに、実証実験で必要な3端子構造とするためのデバイスプロセスの検討およびマスク設計を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
デバイスプロセスに用いるフォトマスクの設計がやや遅れたことで、マスク作製費および一部消耗品が次年度の発注となった。計画の遂行に大きな支障はない。
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