研究課題/領域番号 |
22K04220
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
寺迫 智昭 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (70294783)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 酸化亜鉛 / ヒステリシス / キャリア輸送機構 / 光電流 |
研究実績の概要 |
当初の計画では、当該年度中に水素、酸素、大気、真空と異なる雰囲気で熱処理を施したZnO NRs層を用いたPEDOT:PSS/ZnO NRs/GZOヘテロ接合UV光検出器を作製し、UV光検出におけるNRの表面の影響とその制御性を検討する予定であった。しかしながら、世界的な半導体素子や資材の不足のため、熱処理システムの構築が困難となった。そこで、原料に用いた硝酸亜鉛六水和物とヘキサメチレンテトラミンの濃度比(以下、[HMT]/[ZnNit])を変えて化学溶液析出(CBD)法によって成長したZnO NRs層や大気中で熱処理を施したZnO NRs層を用いた素子作製と特性評価を重点的に行った。その結果、[HMT]/[ZnNit]の増加とともに整流比とPEDOT:PSS/ZnO NRsヘテロ界面に形成されるポテンシャル障壁の高さが上昇した。[HMT]/[ZnNit]=0.94のCBD溶液で成長したZnO NRs層をもつUV光検出器において最大の暗電流対光電流比が得られた他、光電流スペクトルのスペクトル形状に[HMT]/[ZnNit]依存性が観察された。 素子の電圧-電流(V-I)特性では、順方向領域と逆方向領域でヒステリシスループが観察され、UV光照射によって順方向領域のヒステリシス面積は減少するのに対して、逆方向領域のヒステリシス面積は増加するという傾向が見られた。V-I特性は三つの領域に分割され、低電圧領域ではオーミック特性、高電圧領域では電流がほぼ印加電圧の4乗に比例し、それぞれの領域おけるキャリア輸送が直接トンネリングとFowler-Nordheimトンネリングによって支配されていることを示す結果が得られた。両者の中間領域では、空間電荷制限伝導の挙動が観察された.また暗状態において順方向電圧上昇と下降を繰り返すとともに最大順方向電流が増加することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究を推進するための熱処理システムの構築に必要とされた部材調達が困難であったため、一部研究計画を見直したため。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、先送りにした熱処理システムの構築を行う他、既存の装置で対応可能な窒素ガスや水蒸気によるZnO NRs層の特性制御並びにこれらを用いた光検出器の作製とUV光検出器としての動作特性を調査する。 またこれまでに作製したUV光検出器の特性を整理したところ、アンモニアを滴下によってpHを調整したCBD溶液を用いて成長したZnO NRsを用いたUV光検出器において比較的大きな面積をもったヒステリシスが観察されていることから、これを検証する。 ヒステリシスが観察される素子に対して順方向矩形パルス電圧列の印加(セット)と逆方向矩形パルス電圧列の印加(リセット)を繰り返し、その電流変化(=抵抗変化)を測定することでアナログ抵抗変化素子(RAND)としての動作を検証する。具体的には、(1)順方向電圧印加時のパルス数に伴う電流増加、(2)逆方向電圧印加時のパルス数に伴う電流減少を観察する。測定結果は、素子作製のプロセスにフィードバックし、素子性能の向上および再現性の確立を図る。 RANDとしての性能が確認された素子に対して、セットパルス電圧印加のもとでUV光を照射した際の素子の抵抗変化、セットパルス電圧とUV光をともに遮断した後の抵抗変化を観察する。UV光重畳が抵抗変化挙動に及ぼす影響およびセットパルス電圧とUV光ともに遮断した後の抵抗の時間変化(記憶状態に相当する)とセット時の印加パルス数との関係を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では、熱処理システムを構築とそれに必要なマスフローコントローラの購入を予定していたが、世界的な半導体部品不足と資材不足のため、納期が遅くなり、年度内での対応が難しくなった。そのため、研究計画を一部変更し、次年度の計画に組み込むことにしたためである。
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