研究課題/領域番号 |
22K04228
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研究機関 | 広島工業大学 |
研究代表者 |
細谷 健一 広島工業大学, 工学部, 教授 (20755665)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | マイクロ波回路 / 分岐理論 / 調波平衡法 / 不安定現象 / 非線型回路 |
研究実績の概要 |
本課題の目的は、マイクロ波回路における分岐現象の高精度予測技術の確立とそのモデル化である。2022年度はこの目的達成に向け、(1)調波平衡法(Harmonic Balance法)に基づくマイクロ波大信号回路シミュレータの開発、(2)マイクロ波回路の設計・試作・評価、を目標に研究を遂行した。主要な実績は下記の通りである。
1) 調波平衡法(Harmonic Balance法)に基づくマイクロ波大信号回路シミュレータの開発を行った。本シミュレータを用いて増幅回路、周波数逓倍回路、発振回路等の大信号シミュレーションを行い、合理的な結果が得られることを確認した。ただし2022年度は回路計算部のプログラミングの難易度を下げるため、トランジスタ特性をドリフト・拡散モデルに基づく2次元デバイスシミュレーションにより計算する構成とした。そのため今後この部分を大信号等価回路モデルに置換していく必要がある。 2) マイクロ波回路の設計・解析技術および製造・評価技術の精度検証の目的で、各種受動回路(低域通過フィルタ等)の設計・試作・評価を行い、設計値と測定値の良好な一致を確認した。今後能動回路の試作を実施していくに当たり、今回用いた設計・製造技術の妥当性を確認できた。 3) マイクロ波能動回路の設計・試作の準備の目的で、能動素子(GaAs PHEMTおよびSiGe HBT)の特性評価および大信号等価回路モデリングを実施した。その結果、本課題で予定している5 GHz帯の能動回路用の素子として十分な特性を確認した。また、5 GHz帯の能動回路設計に十分な精度の大信号等価回路モデルを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Harmonic Balance法に基づくマイクロ波大信号回路シミュレータの開発を行い、合理的な計算結果が得られることを確認できた。ただしプログラミングの簡素化の目的でトランジスタ特性を2次元デバイスシミュレーションにより計算する構成としたため、今後トランジスタの部分を等価回路モデルに置換していく必要がある。回路試作に関しても、受動回路の設計・試作・評価を行い設計・製造技術の妥当性を確認したが、能動回路については2023年度に持ち越した。以上を考慮し「やや遅れている」と判断した。遅延の理由としては、回路シミュレータのプログラミングやトランジスタの等価回路モデル抽出に想定以上の時間を要した点が挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
Harmonic Balance法に基づくマイクロ波大信号回路シミュレータの開発に関しては、トランジスタ部分の大信号等価回路モデルへの置換、および分岐理論の組込みを進める。回路試作については、増幅回路や周波数分周回路などの能動回路の設計・試作・評価を進め、分岐現象の実験的検知を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
ごく少額のため2023年度に繰り越すこととした。2023年度予算と合わせ物品費として使用する予定である。
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