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2022 年度 実施状況報告書

有機半導体を用いた放射線方向検知センサの開発

研究課題

研究課題/領域番号 22K04231
研究機関香川高等専門学校

研究代表者

森宗 太一郎  香川高等専門学校, 電子システム工学科, 准教授 (30455167)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード光方向検知 / 光位置検出センサ / 直線性 / 入射角度
研究実績の概要

本研究は福島原発事故における放射能漏れにおいて,放射線の迅速な計測が必要不可欠であるが,放出された核種の線量を測定するだけでは放射線物質を見つけることが難しい。そこで本研究では,放射線に反応する位置検出センサを積層することで一体化し、低コストで超軽量な放射線方向検出センサを実現することで,原発事故等の災害時における放射性物質の除去をより迅速に行うことができる放射線飛来方向検出センサ及びモニタシステム開発を目的としている。
今年度は半透明な位置検出センサを作製して、それらを積層することで可視光に反応する光方向検知センサの開発と特許化、およびその性能について評価した。真空蒸着法で膜厚制御した有機半導体を用いることで半透明で薄膜状の位置検出センサを積層した光の入射方向検知センサを実現した。主に臨界角である30°までの入射角度検知を実証し、その測定精度や誤差の要因について検討した。角度が広がるに伴い誤差も大きくなることが分かり、その原因が積層時における下側素子の直線性の低下であることが分かった。今後の課題として上側素子の高透明化についても検討する必要があることを示唆している。
また光センサとして放射線に反応することが報告されているPCBM:P3HTの有機半導体材料を光電変換層に用いた半透明位置検出センサを開発した。また観測対象がパルス状の放射線を想定して周波数特性を評価した。その結果、励起光強度依存性があることや100kHz程度の遮断周波数を持つことが分かった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

最終的に放射線方向検知センサを実現するために、初年度は下記について予定していた。
1)積層型位置検出センサを用いた光方向検知センサの特許化、2)光の入射角に対する誤差の原因解明、3)放射線に反応する有機半導体を用いた位置検出センサの開発、4)X線照射による応答
まず、電極に20nm程度の薄膜Agを用いることで半透明な位置検出センサを作製し、それらを積層することで光の入射方向を検知できるセンサの開発に成功した。またその入射角度の測定精度についても検証した。その結果、入射角度が広がるに伴い誤差も大きくなることが分かり、その原因が積層時における下側素子の直線性の低下であることが分かった。その改善方法として下部素子の感度の向上のために上部素子の高透明化が必要であることが分かった。また特許出願を行った。
更に放射線に反応することが報告されているPCBM:P3HTの有機半導体材料を光電変換層に用いた半透明位置検出センサについても開発に成功した。最終的な観測対象がパルス状の放射線を想定しているため、まず直線性やパルス状の可視光入射に対する周波数特性を評価した。その結果、励起光強度依存性があることや100kHz程度の遮断周波数を持つことが分かった。しかし放射線の検知については、使用予定であった現有のX線回折装置のX線源部が故障して放射線の照射ができなかったためX線に対する反応は確認できていない。今後は他機関での測定を予定している。

今後の研究の推進方策

本研究の課題として、現状では入射角度30°で7%程度の誤差があるため、入射角度検知の精度を上げるために有機位置検出センサの高透明化を図る。具体的には共通電極として用いているAg薄膜にMoOxを用いることで共通電極の低抵抗化と高透明化を実現し、これにより下側素子の感度を向上することができると考えている。
また放射線に反応する素子を大気中で測定するため、素子の厚膜化と大気中での動作安定性の評価および測定を迅速に行うための治具作製を行う予定である。

次年度使用額が生じた理由

予定していた表面抵抗層用のパターニングをフォトリソグラフィーで作製する際にOHPシートに印刷することで試作的に行い代用したので残額が発生している。今後、素子の直線性の精度を検証しながらパターンが確定した段階で約11万円のレチクルを発注する予定である。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 6件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] Organic Narrow-Band Photovoltaic Devices toward Applications of Optical Sensors2022

    • 著者名/発表者名
      Hirotake Kajii, Taichiro Morimune
    • 雑誌名

      Journal of printing science and technology

      巻: vol.56, No.3 ページ: 123-130

    • DOI

      10.11413/nig.59.123

    • 査読あり
  • [学会発表] 抵抗率が異なる PEDOT:PSS を用いた有機位置検出センサの周波数特性2023

    • 著者名/発表者名
      森宗太一郎,瀧本 一斗,高橋 涼,藤田 鈴香,村上 浩,宮崎 貴大,金澤 啓三,高田英治,梶井 博武
    • 学会等名
      第70回応用物理学会春季学術講演会
  • [学会発表] Characteristics of organic position sensitive detectors using PEDOT:PSS as a surface resistive layer2022

    • 著者名/発表者名
      Izuto takimoto, Ayumu Nagakawa, Taichiro Morimune, Hiroshi Murakami, Suzuka Fujita
    • 学会等名
      7 th International Conference on “Science of Technology Innovation” STI-Gigaku 2022
    • 国際学会
  • [学会発表] Development of Semitransparent Organic Position Sensitive Detector2022

    • 著者名/発表者名
      Ayumu Nagakawa, Izuto Takimoto, Taichiro Morimune
    • 学会等名
      7 th International Conference on “Science of Technology Innovation” STI-Gigaku 2022
    • 国際学会
  • [学会発表] Study of Cellulose Nano Fiber Resistance for Position Sensitive Detector2022

    • 著者名/発表者名
      Ryo Takahashi, Ayumu Nagakawa, Taichiro Morimune, Hiroshi Murakami, Suzuka Fujita, Takaaki Kasuga
    • 学会等名
      7 th International Conference on “Science of Technology Innovation” STI-Gigaku 2022
    • 国際学会
  • [学会発表] Fabrication and Characteristics of Semitransparent Organic Position Sensitive Detector with thin Ag electrode2022

    • 著者名/発表者名
      Izuto Takimoto, Ayumu Nagakawa, Taichiro Morimune, Hirotake Kajii
    • 学会等名
      13 th International Conference on Nano-Molecular Electronics
    • 国際学会
  • [学会発表] Response Properties of Organic Position Sensitive Detectors based on PEDOT:PSS Surface Resistive Layers with Different Resistiveties2022

    • 著者名/発表者名
      Taichiro Morimune, Hirotake Kajii
    • 学会等名
      13 th International Conference on Nano-Molecular Electronics
    • 国際学会
  • [学会発表] Development of Semi-Transparent Organic Position-Sensitive Detectors Using Thin-Film Silver Electrodes2022

    • 著者名/発表者名
      Izuto Takimoto, Ayumu Nagakawa, Taichiro Morimune, Hiroshi Murakami, Suzuka Fujita, Takahiro Miyazaki, Keizo Kanazawa, Hirotake Kajii
    • 学会等名
      The 1 st KOSEN Research International Symposium
    • 国際学会
  • [産業財産権] 光線方向検知センサ2022

    • 発明者名
      森宗太一郎,長川歩,金澤啓三,宮崎貴大
    • 権利者名
      森宗太一郎,長川歩,金澤啓三,宮崎貴大
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      PJP22841TK

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公開日: 2023-12-25  

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