研究課題/領域番号 |
22K04239
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
立松 芳典 福井大学, 遠赤外領域開発研究センター, 教授 (50261756)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ジャイロトロン / モード変換器 / ガウスビーム / 放射パターン計測 / 結合係数 |
研究実績の概要 |
多周波数ガウスビーム発振ジャイロトロン G-VIIのモード変換器の特性を調べた。方法は、G-VIIから放射されたガウスビームを塩化ビニル板に照射し、その温度上昇を赤外線カメラで観測することで、多くのモードから変換されたビームの形状および放射位置を調べた。2次高調波モードについてはすでに調べていたので、今回は基本波モードについて調べた。ジャイロトロンの発振モード(TEmnモード)のmとモードから決まる定数χmnの比m/χmnの値の順に、窓からのビームの放射方向が並ぶことが理論的に予想されている。塩化ビニル板の位置を固定して発振モードによる温度上昇位置の違いを観測したところ、結果はほぼ理論通りにビーム方向が並んだ。ほとんどの発振モードに対して、放射ビームの形状はガウスビームに近かったが、TE13モードとTE14モード発振時は、2つのピークをもった。 このピークが2つになる原因を解明した。観測された周波数は1つのみであったので、複数のモードが発振しているわけではない。m/χmnの値の順にビームの放射方向を並べるとTE13、TE14モード発振時の2つのピークの間にTE02、TE03モードのビームが出ていた。そこで2つのピークのうち中心から遠い側を-m/χmnに対してプロットすると、1つの線上にデータが載った。このことから、中心から遠い側のピークは共振器内で他のモードとは逆回転するモードが発振した結果ではないかという仮説を立てた。この仮説が正しければ、共振器に入射する電子ビーム半径を変えるとそれぞれの回転モードと電子の結合度が変化するため、2つのピークの強度が結合度に従って変化するはずである。このことを実験で確かめた。その結果、2つのピーク強度の振る舞いは結合度の変化を再現した。このことから仮説が正しいことを実証できた。 この成果を国際学会およびプラズマ・核融合学会年会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画調書に記載した計画通りに進行できているため。
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今後の研究の推進方策 |
2つのピークができる原因が、共振器内で2つの回転モードが同時に発振したためであることをつきとめた。理論上は電子の入射位置を調整することで、1つのピークの強度を低く抑えることができるはずだが、実際には電子ビームが幅を持つこと、ジャイロトロンの軸を磁場の軸と誤差なく一致させることなどが要求されることから、完全に1つピークにすることは難しそうである。ただし、どちらかのビーム強度を強くすることはできる。このため、計画時に予定したモード変換器の改良は意味がないことがわかった。そのため、次の課題であるモードにより異なる方向に出射されるビームを同じ位置を通るように調整する外部ミラー系の設計に進む。
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次年度使用額が生じた理由 |
発表を行った国際学会はハイブリッドで行われた。新型コロナ感染への不安のため国際学会はオンラインで参加した。そのため、当初計上していた参加旅費を使用しなかった。また、当初購入を予定していた電磁波解析ソフトウェアを試用したところ、円筒形状を扱うのに必須であるベッセル関数の機能を有していないことがわかったため、他の電磁波解析ソフトウェアを試した結果、予定していたソフトウェアよりも価格が低く購入できた。以上の理由から、次年度使用額が生じた。 次年度使用額は、外部ミラー系構築のための消耗品費、電磁波解析ソフトウェアの機能アップに使用する。
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