研究課題/領域番号 |
22K04240
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
守安 毅 福井大学, 学術研究院工学系部門, 講師 (00788789)
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研究分担者 |
谷 正彦 福井大学, 遠赤外領域開発研究センター, 教授 (00346181)
北原 英明 福井大学, 遠赤外領域開発研究センター, 特命助教 (20397649)
桑島 史欣 福井工業大学, 工学部, 准教授 (30342554)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | テラヘルツ / レーザーカオス / スピントロニクス |
研究実績の概要 |
MLD-TDS の光源として利用すべく,外部鏡によって光学的遅延を加えた光を安価な DL-7140-213X や比較的高強度な L785H1の連続波半導体レーザーに帰還することによって発生させたレーザーカオス光を,構築した高分解能・広帯域なフーリエ変換分光装置をもちいて光スペクトルの評価を行った.プログラムと測定系の見直しを行うことにより,48 時間要していた測定時間が ~30 分になり,実験で実用可能な段階になってきた.戻り光の無いときのスペクトルが広い範囲にわたって無秩序にモードが現れモードを同定することが難しいにもかかわらず,DL-7140-213X と L785H1 ともに,レーザーカオス光発生にともなった長波長側に非対称に広がった多モード化が確認することができることから,レーザーカオス光が統計的に安定であることがわかる.その他,マグネトロンスパッタリング装置を用いて成膜した Pt と Ni からなるスピントロニック素子について X 線光電子分光装置(XPS)を用いた膜厚測定と,超短パルスレーザーを用いたテラヘルツ波放射測定を行った.Pt 薄膜に関して,XPS で推定された膜厚と分光測定で推定された膜厚と比較したところ,大きな違いはないという結果が得られた. Ni に関しては、水酸化物や酸化物の存在のため XPS による膜厚の推定が難航しているが,膜内部への不純物の流入は少ないことがわかっている.テラヘルツ波放射測定では,先行研究と同じ膜厚を持っていると分光測定により推定されるスピントロニック素子からのテラヘルツ波放射が確認されたが,外部磁場の変化にテラヘルツ波の電場振幅が応答しなかったため,膜の均一性が低い場合は,スピントロニック素子で提案されているモデルではテラヘルツ波が放射されない可能性があることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
円安などの影響により導入できなかった高分解能なファイバー分光器の代わりになる高分解能・広帯域なフーリエ変換分光装置の構築を行うことができたが,構築の高速化に予想以上の時間を要してしまった.スピントロニクス素子に関しては,結晶性が悪い可能性があるため,アニールなどにより結晶性の向上を行う必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
レーザーカオス光の評価のためのフーリエ変換分光装置の構築ができたため,MLD-TDS の構築を進める.計画を見直し,高分解能なファイバー分光器の購入をやめ,レーザーカオス光励起した MLD-TDS 構築に必要であると考えられるアイソレーター等を購入し研究目的の達成を目指す.スピントロニック素子のレーザー光に対するダメージ閾値が高い特性を活かすため,光源を L785H1 に絞って MLD-TDS を構築する.引き続き,フーリエ変換分光装置の測定時間の高速化と測定精度の向上は目指し,作業効率をあげる.測定時間の高速化によりレーザーカオスの構造安定性に起因する統計性が損なわれる可能性がある.このレーザーカオス光の光スペクトルの安定時間は,同様の時間遅延システムを用いている MLD-TDS にとっては,重要かつ興味深い問題となる.膜質の向上と酸化物の除去を期待して,スピントロニック素子の作製については,水素雰囲気下でのアニールを検討する,現在の成膜環境下での成膜が困難な場合は,スピントロニック素子の作製委託やUniversity of Denver の Xin Fan との共同研究を検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
構築したフーリエ変換分光装置が実用可能な段階になったため,円安等の影響により導入すると目的の遂行が難しいと判断されていた高分解能なファイバー分光器の購入をやめ,次年度に MLD-TDS 構築のために必要な物品を購入するため繰り越すことにした.今年度は,自己収入費が潤沢であったため,そちらを使用した.
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