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2022 年度 実施状況報告書

有機金属気相成長法によって作製した新規広帯域 中赤外発光する量子構造の開発

研究課題

研究課題/領域番号 22K04245
研究機関宮崎大学

研究代表者

前田 幸治  宮崎大学, 工学部, 教授 (50219268)

研究分担者 藤澤 剛  北海道大学, 情報科学研究院, 准教授 (70557660)
荒井 昌和  宮崎大学, 工学部, 准教授 (90522003)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード超格子構造 / エネルギーバンド計算 / 発光の温度-励起強度ダイアグラム / 発光遷移図 / PLスペクトル / MOVPE / InAs/GaSb / 中赤外線
研究実績の概要

本研究は、InAs/GaSb超格子構造を用いて室温付近で広い発光スペクトルを持ち、強い中赤外発光を得られる素子を作製することが目的である。
2022年度は実際の超格子構造の作製に先立ち、まず2種類の超格子構造について5Kから300Kまで、11点の温度および、10^21から10^25/m^3の範囲の励起キャリア密度の組み合わせでエネルギーバンド計算を行い、自然放出による発光スペクトルの励起強度依存性と温度依存性を詳細に検討した。その結果、発光の温度-励起強度ダイアグラムは大きく3つの領域に分けられることを明らかにした。それは、低温低励起、中温中励起、高温高励起状態であった。
次にそれらの発光が、どのようなバンド構造に由来するかを知るために、各温度のバンド図から発光遷移図を作成し発光準位との対応を行った。その結果、低温低励起状態から中温中励起状態への変化は、最低の準位間が最も強く発光している状態から最低の次に低い状態間の方が発光強度が強くなる時に起きたことを明らかにした。一方、中温中励起状態から高温高励起状態への変化は、最低の次に低い状態間から3番目に低い状態間の遷移が優勢になる領域に相当していた。しかし、この変化は、温度や励起強度により発光の変化のパターンが変化に富み、統一的に説明することはまだできていない。
これらの結果より室温付近の発光を支配するのは最低の準位間ではなく、それより大きなエネルギーをもつ下から2番目、3番目の準位間の設計が重要であることを示すことができた。
次にこれらの結果を参考にMOVPEにより、超格子の作製を行った。しかし、測定装置の故障が続きまだ室温のデータしか得られていない。その予備的な結果では、成膜温度に対する発光強度の変化が大きく、強く発光する素子の作製温度範囲は狭いことが明らかになっている。これらの結果を元に現在作製条件の最適化を行っている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

超格子の素子の作製に先立って、まずバンド計算を行い、計画通り結果が得られた。その後MOVPEにより作製を行った。作製された超格子の評価のための低温まで測定できるPL測定装置のプリアンプ部分と低温冷却分が2回にわたって大きな故障をし、原因の特定や修理に半年ほどかかった。プリアンプ部の修理後、室温での測定は行えるようになったので、作製されたサンプルの評価は、室温で行い対応した。
また、予定していなかった事態として、サンプルの発光強度が時間とともに低下する減少が見られた。現在は真空デシケータに保存するなどして対応しているが、年単位の変化なので長期的に観察しないと原因はわかっていない。

今後の研究の推進方策

低温PL装置の修理ももうすぐ終わる。やや遅れているので、すべてサンプルで低温測定までは行わず、重要な構造のサンプルを測定し、計算結果通りの発光をしているか確かめたい。その結果より、この組成で異なる構造の2度目のバンド計算を行うか、材料系や組成を変化させた条件で計算を行うか判断したい。また、作製温度の最適化や、2度目のMOVPEによるサンプル作製を行うことを計画している。
また、室温でのPL測定の結果だけだが、赤外PL強度は計算より相対的に低い値を示す構造のものがいくつか得られている。これらの原因を探りたい。

次年度使用額が生じた理由

測定装置が故障して、修理を依頼した。はじめの予定では2022年度に戻ってくる予定だったが、2023年度にずれたので、その分の予算が繰越となった。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] MOVPE法で作製したGaSb層厚を変化させたInAs/GaSb超格子の中赤外発光過程2022

    • 著者名/発表者名
      前田 幸治, 大濱 寛士, 岩切 優人, 荒井 昌和, 藤澤 剛
    • 雑誌名

      宮崎大学工学部紀要

      巻: 51 ページ: 35-40

  • [学会発表] Temperature Dependence of Mid-infrared Emission Process of InAs/GaSb Superlattices Grown by MOVPE2022

    • 著者名/発表者名
      Masakazu ARAI, Koji MAEDA, Yuto IWAKIRI and Takeshi FUJISAWA
    • 学会等名
      CLEO-PR 2022
    • 国際学会
  • [学会発表] Wide Wavelength Range Emission from InAs/GaSb Type-II Superlattice Grown by MOVPE2022

    • 著者名/発表者名
      Masakazu Arai, Yuto Iwakiri, Takeshi Fujisawa, and Koji Maeda
    • 学会等名
      28th International Semicondutor Laser Conference
    • 国際学会
  • [学会発表] MOVPE法で作製したInAs/GaSb超格子の中赤外領域における広域発光2022

    • 著者名/発表者名
      岩切 優人, 荒井 昌和 , 藤澤 剛 , 前田 幸治
    • 学会等名
      第83回応用物理学会秋季学術講演会
  • [産業財産権] 発光素子2022

    • 発明者名
      前田幸治、荒井昌和、藤澤剛
    • 権利者名
      前田幸治、荒井昌和、藤澤剛
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2022-134276

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公開日: 2023-12-25  

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