研究課題/領域番号 |
22K04251
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研究機関 | 香川高等専門学校 |
研究代表者 |
山本 雅史 香川高等専門学校, 電気情報工学科, 准教授 (60733821)
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研究分担者 |
堀邊 英夫 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 教授 (00372243)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | バイオミメティクス / ダブルラフネス / 大気圧低温プラズマ / ポリマーブレンド |
研究実績の概要 |
本研究では,溶媒・ポリマー・プラズマの3つの要素と微細構造の形状との関係を明らかにし,ポリマー表面における微細構造の形成メカニズムを解明することで,新しい微細構造形成技術を開発することを目的としている。この目的の達成に向けた取り組みについて,以下のとおり,今年度の研究成果を報告する。 〇相溶系ポリマー(ポリメチルメタクリレート(PMMA)/ポリフッ化ビニリデン(PVDF))について,溶媒キャスト法でのポリマー膜の作製のために,溶媒の選定や溶液濃度の検討を行い,ポリマー膜の作製条件を把握した。また,非相溶系として,PVDFの代わりにポリスチレン(PS)を用いて,同様に膜作製条件を検討した。 〇濃度の異なるポリマー溶液を調製し,膜作製条件を変えて,残留溶媒量が異なるポリマー膜を作製した。膜の表面状態を観察した結果,細かい孔が形成されていることを確認した。膜を削り取って回収し,膜内の残留溶媒量を調べた結果,残留溶媒量は3~5 wt%であり,膜体積のおよそ10%程度が空隙であると推測できた。 〇PMMA膜,PVDF膜およびPS膜について,大気圧低温プラズマ照射によるエッチング速度を調べた。PVDF膜やPS膜のエッチング速度は,PMMA膜のおよそ半分程度であった。このエッチング速度の差を利用することで,ダブルラフネスにおける大きな凹凸を形成できると見込んでいる。 〇プラズマ照射中のポリマー表面の温度上昇を調べた。プラズマと基板との距離を数10 mmとして,数10 Wのプラズマ点灯電力で照射すると,数分以内でおよそ200 °Cに到達することがわかった。各ポリマーの熱物性に応じたプラズマ照射条件の最適化を検討していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ポリメチルメタクリレート(PMMA),ポリフッ化ビニリデン(PVdF)およびポリスチレン(PS)の3種類のポリマーについて,溶媒キャスト法によるポリマー膜の作製条件の把握は概ね完了できた。ポリマー膜内の残留溶媒量が少なく,多くの溶媒は回転塗布後の乾燥時に揮発していることを確認した。膜体積の大よそ10%程度に,溶媒揮発経路であろう細孔が分布・形成されていると見込まれる。ブレンド比の異なるPVDF/PMMA膜(相溶系)の作製条件を把握できたとともに,膜の表面状態の観察および解析技術を確立できた。引き続き,PMMA/PS膜(非相溶系)での作製条件の検討を進めるとともに,表面状態の評価やプラズマ処理条件の検討を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
プラズマ照射による微細構造の形成メカニズムの仮説として,細孔(溶媒揮発経路)をベースとして微細構造が形成・成長していくモデルを提案・検討している。一方で,ダブルラフネス構造の実現には,大きな凹凸も必要である。今年度,PVDF膜やPS膜のエッチング速度がPMMA膜の半分程度であることを確認できたことにより,PMMAに対してPVDFやPSをブレンドすることでエッチング速度の差による大きな凹凸と細孔起因による細かい凹凸の両方を同時に形成できると見込んでいる。今後,ブレンド比の異なるPVDF/PMMA膜(相溶系)やPMMA/PS膜(非相溶系)について,それぞれ表面状態の評価やプラズマ処理条件の検討を進めていくとともに,表面状態と濡れ性との関係を調べ,超撥水表面の実現可能性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(次年度使用が生じた理由)購入を検討していたラマン分光器およびその光源のデモ機の評価を進めたが,有意なスペクトルを取得することが難しいことがわかったため,別の方法を検討する必要がある。また,一部の学会・研究会をオンラインで参加したことで,旅費が不要となった。これらの理由のため、次年度使用額が生じた。 (使用計画)ラマン分光の代替案としてFT-IR光学系を構築するために使用することを考えている。また,価格が高騰しているプラズマ点灯用原料ガスであるHeガスをはじめ,試薬や分析機器用の消耗品の購入に充てる。
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