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2023 年度 実施状況報告書

プレストレストコンクリート橋の鋼材腐食破断を考慮した合理的維持管理手法の構築

研究課題

研究課題/領域番号 22K04259
研究機関神戸大学

研究代表者

森川 英典  神戸大学, 工学研究科, 教授 (70220043)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードプレストレストコンクリート / 橋梁 / PC鋼材 / 腐食 / 破断 / 応力腐食割れ / 維持管理 / 構造信頼性
研究実績の概要

本研究では,2022年度の研究結果を踏まえて,苛性ソーダ(NaOH)環境に着目した応力腐食割れ実験において,実構造物において見られている長手方向滑り破断の滑り長さが非常に大きい破断形式に着目して検討を行った.まず,応力要因として,電食切欠き形状において曲率半径を増加させること,破断の少し手前の段階で荷重を長時間保持すること,また,環境要因として,苛性ソーダ水溶液への添加剤として,PbO(0.2%)に加えて,新たに最近,米国連邦道路管理局(FHWA)リポート(2022年)で報告されているグラウト中での腐食原因物質である硫酸カリウム(K2SO4 3.5%)を追加し,応力腐食割れ実験を実施した.その結果,それらの要因により,滑り長さが比較的大きな破断形式が安定的に生じることを助長することがわかった.また光学式ビデオスコープを用いて破面凹凸形状の測定を行った結果,軸方向における凹凸頻度が軸直角方向に比べて非常に多く,凹凸高低差が非常に小さい特徴を有しており,長手方向滑り長さが非常に長い特徴を有する硝酸塩脆化割れの破面と類似していることがわかった.
2022年度に検討したPC鋼より線束の腐食劣化モデルを用いて,既設高速鉄道PC桁橋の曲げ破壊および曲げひび割れに対する構造信頼性を信頼性指標βに基づいて評価した.
主ケーブルが健全もしくは劣化レベルⅠc(軽微な腐食)の場合,曲げ破壊および曲げひび割れに対して大きな安全余裕を有していた.主ケーブルが劣化レベルⅡc(中程度の腐食)に至ると,PC鋼より線に破断が多く発生し,曲げ破壊に対する信頼性指標βfは目標信頼性指標を下回るケースが多く確認されるとともに,曲げひび割れに対する安全余裕をほぼ消失している状態にあった.この結果を踏まえた安全側の評価・判定手法について検討を行い,合理的な維持管理手法として提示した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

PC鋼線の脆性破断メカニズムの解明については,実構造物で考えられる環境要因として苛性ソーダ(NaOH),酸化鉛(PbO)に加えて,硫酸カリウム(K2SO4)を考慮し,応力要因として,切欠き形状と載荷条件の変更により,比較的大きな長手方向滑りを伴う脆性破断現象を安定的に生じさせることに成功した.
PC鋼材の腐食を考慮した既設PC桁の構造信頼性に関する検討についても,既設高速鉄道PC桁橋の曲げ破壊および曲げひび割れに対する信頼性指標を評価し,その特性を明らかにした.また外ケーブル張力モニタリングにおいて,曲げひび割れが発生していないことを継続的に確認することにより曲げひび割れ発生に対する信頼性が向上していくことを示した.

今後の研究の推進方策

2023年度の研究結果を踏まえて,グラウト充填不足を模擬したPC鋼より線束試験体を使用して促進腐食試験を行い,グラウト充填不足境界部における局部腐食の発生状況を詳細に検討する.一方,PC鋼線束試験体を用いて同様の促進腐食試験を行い,グラウト充填不足境界部において局部腐食を発生させた後,苛性ソーダ脆化割れ試験を行い,長手方向滑りを伴う脆性破断の感受性を評価する.また,グラウトのブリーディングを可溶性硫酸イオン量との関係,可溶性硫酸イオン量が鋼材の局部腐食発生と脆性破断に及ぼす影響について,さらに詳細な検討を行い,効果的な維持管理手法について検討する.

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] グラウト充填不足部のPC鋼より線束の腐食劣化性状に関する実験的検討2023

    • 著者名/発表者名
      福田圭祐, 宮代凌成, 河野航平, 森川英典, 堀井智紀
    • 雑誌名

      コンクリート構造物の補修,補強,アップグレード論文報告集

      巻: 23 ページ: 349-354

    • 査読あり
  • [学会発表] グラウト充填不足部におけるPC鋼より線束の腐食性状に関する実験的検討2023

    • 著者名/発表者名
      福田圭祐, 河野航平, 宮代凌成, 森川英典, 堀井智紀
    • 学会等名
      土木学会第78回年次学術講演会
  • [学会発表] 苛性ソーダ環境下におけるPC鋼線の応力腐食割れに関する実験的検討2023

    • 著者名/発表者名
      黒柳拓海, 松浦歩咲, 森川英典, 前畑俊男
    • 学会等名
      2023年度関西土木工学交流発表会
  • [学会発表] グラウト充填不足部におけるPC鋼より線束の腐食劣化特性の実験的検討2023

    • 著者名/発表者名
      宮代凌成, 福田圭祐, 森川英典, 堀井智紀
    • 学会等名
      2023年度関西土木工学交流発表会
  • [学会発表] Structural Reliability Assessment of Existing PC Girders in High-speed Railway Considering Actual Train Load and Corrosion of PC Tendons2023

    • 著者名/発表者名
      Keisuke Fukuta, Hidenori Morikawa, Tomohiro Mino
    • 学会等名
      MRM2023/IUMRS-ICA2023 Grand meeting
    • 国際学会

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公開日: 2024-12-25  

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