研究課題/領域番号 |
22K04269
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
佐々木 謙二 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (20575394)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | コンクリート / 空隙構造 / 連続性 / 物質移動特性 / 耐久設計 |
研究実績の概要 |
本研究は,コンクリートの使用材料,配合,養生,変質によって変化する空隙構造の複雑性・連続性を,水,気体,イオンをトレーサーとした物質移動特性によって定量評価することを目指すものである.材料・配合・養生・変質状態の異なるセメント系硬化体に対して「Ⅰ)物質移動特性による空隙構造の連続性評価試験」を実施する.それと並行して,「Ⅱ)屈曲・連続性の異なる管群モデルによる物質移動シミュレーション」も実施する.それらの結果をもとに「Ⅲ)空隙構造の複雑性・連続性を考慮した物質移動予測手法」の構築に取り組むものである.研究期間3年のうちの1年目である本年度は,「Ⅰ)物質移動特性による空隙構造の連続性評価試験」,「Ⅱ)屈曲・連続性の異なる管群モデルによる物質移動シミュレーション」を実施した. 「Ⅰ)物質移動特性による空隙構造の連続性評価試験」では,材料・配合・養生・変質状態の異なるセメント系硬化体に対して,塩化物イオン,水,酸素をトレーサーとして,定常状態における着目物質(トレーサー)の深さ方向の分布量を測定することや,厚さの異なる試験体による気体やイオンの拡散係数測定試験により,空隙構造の連続性を定量評価する計画である.本年度は,飽水状態の試験体を一次元的に乾燥させ,乾燥後の深さ方向の水分残存量分布を測定し,空隙構造の連続性を評価したところ,水結合材比が小さくなるほど,混和材の置換率が大きくなるほど,空隙構造の連続性は低下し,また物質移動限界深さが小さくなることを定量的に評価することができた. 「Ⅱ)屈曲・連続性の異なる管群モデルによる物質移動シミュレーション」では,空隙径,空隙量,屈曲度,連続性等をパラメータとした空隙構造の管群モデルの作成についての検討を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の研究期間は3年を予定しており,初年度は,材料・配合・養生・変質状態の異なるセメント系硬化体に対して「Ⅰ)物質移動特性による空隙構造の連続性評価試験」,「Ⅱ)屈曲・連続性の異なる管群モデルによる物質移動シミュレーション」を実施する計画としており,一部の試験は装置の準備に時間を費やし,試験開始が予定よりも遅れたものの,概ね計画通りの実験を実施することができた.
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は,引き続き,材料・配合・養生・変質状態の異なるセメント系硬化体に対して「Ⅰ)物質移動特性による空隙構造の連続性評価試験」を実施するとともに,「Ⅱ)屈曲・連続性の異なる管群モデルによる物質移動シミュレーション」を推し進める.それらの結果をもとに「Ⅲ)空隙構造の複雑性・連続性を考慮した物質移動予測手法」の構築に向けて検討を開始する. 「Ⅰ)物質移動特性による空隙構造の連続性評価試験」については,長期材齢の試験体に対してトレーサーの存在分布に基づく空隙構造連続性評価試験を実施するとともに,空隙径分布や水和物相組成の測定にも着手する. 「Ⅱ)屈曲・連続性の異なる管群モデルによる物質移動シミュレーション」については,空隙径,空隙量,屈曲度,連続性等をパラメータとした空隙構造の管群モデルを用いて物質移動シミュレーションを行い,塩化物イオン濃度分布の実測結果等との比較・検討を行う. 「Ⅲ)空隙構造の複雑性・連続性を考慮した物質移動予測手法」については,空隙構造の複雑性・連続性に及ぼす材料,配合,養生・変質の影響の評価結果や水和物組成との関係を組み込んだ物質移動予測手法の検討を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
試験装置の改良が必要となる可能性が考えられたことから,試験装置の作製数を当初計画より変更した.試験装置の追加分は,改良の上,翌年度購入する予定である.また,解析ソフトについても追加モジュールの選択に時間を要し,追加モジュールは翌年度購入することとした.
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