研究課題/領域番号 |
22K04279
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山川 優樹 東北大学, 工学研究科, 教授 (80324010)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 送電鉄塔 / 電力インフラ / 耐災害性 / レジリエンス性 / 構造物の健全性評価 / 損傷・修繕シミュレーション |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,災害後の電力供給の迅速復旧に資する送電鉄塔の損傷点検・修繕に関する基盤技術を高度化することである.具体的には,強風や地震などの過酷自然ハザード事象における過大荷重作用による損傷・崩壊機構を解明する.さらに,損傷後の部材交換などを模擬した修繕シミュレーション解析を行い,耐荷力等の性能回復程度(修繕効果)を定量明示する.これにより,損傷状態に基づいて鉄塔の健全性保持程度を客観的に評価可能とし,災害後の点検業務に適用しうる健全性判定指針を構築する.損傷形態に応じた効率的な修繕方法を体系化し,修繕後の回復性能を定量保証した修繕を実現するための修繕方法策定指針の提案を目指す. 本年度ははじめに,台風や地震などにおいて設計想定値を超える過大荷重作用時の送電鉄塔の損傷機構の解明に取り組んだ.具体的には,設計想定値を上回る強風荷重と地震時の地盤変状に起因する脚部不同変位(基礎不同変位)の2種類の外的作用を想定し,それぞれについて耐荷性能と損傷挙動を評価した(損傷解析).損傷が顕著となる部位や部材変形の進展挙動は外的作用要因によって大きく異なると予想されるので,その相関を注意深く検討した.その結果,強風荷重や脚部不同変位の方向によって部材損傷の発生様態の違いが確認された. 次に,損傷状態にある鉄塔の健全性保持程度の定量評価を行った.前述の損傷解析で損傷状態に至った鉄塔について再載荷解析を行い,損傷後耐荷力を指標として健全性保持程度を定量評価した. つづいて,損傷した鉄塔の修繕シミュレーション解析を行い,修繕効果,すなわち耐荷力回復程度を定量評価した.その際,強風荷重の過大作用によって損傷した鉄塔については,所定本数の損傷部材を交換する修繕を模擬した解析を行った.脚部不同変位によって損傷した鉄塔については,部材交換と不同変位除去の修繕を模擬した解析を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
強風荷重の過大作用と脚部不同変位を想定した損傷解析による耐荷性能と損傷挙動の評価,損傷状態の鉄塔に対する再載荷解析による損傷後耐荷力の評価,修繕を模擬した解析による修繕後の耐荷力回復程度の評価を初年度に実施でき,当初の計画以上に進展していると判断している.
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今後の研究の推進方策 |
現時点では,強風荷重の設定において限定的な季節荷重の想定に留まっている.着氷・着雪の影響など季節によって特性が異なる荷重条件を設定した検討を現在着手している.また,脚部不同変位については,単一の脚部に限定的な方向の不同変位を想定した検討に留まっている.複数の脚部に異方向の不同変位が生じた場合の検討がこれから必要である. 修繕解析においては,特定の損傷レベルにある鉄塔に対して所定本数の損傷部材を交換する修繕を想定した検討に留まっている.損傷レベル,部材交換の本数,耐荷力回復程度との関連を明らかにすることは,効率的な修繕方法の判断,ならびに修繕後の回復性能を定量保証した修繕を実現するために重要と考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画では,初年度に数値計算用設備を新規に導入予定であったが,現有設備で本年度の研究に必要な数値計算を実施できた.次年度に新規設備を導入予定である.研究打ち合わせ,情報収集,研究成果発表等で支出を予定していた旅費は,オンラインで代替できたため支出不要となった.当初予定していた研究補助の謝金は,本年度は支出することなく研究遂行が可能であった.以上が当初計画と本年度の実支出額に差が生じた主な理由である.
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