研究課題/領域番号 |
22K04290
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
齊藤 準平 日本大学, 理工学部, 准教授 (20349955)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 塩分浸透 / 見掛けの拡散係数 / 圧縮応力 / 弾性限度 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,圧縮応力付与条件の違いが拡散係数にどのような変化を及ぼすのかを解明し,応力付与条件と拡散係数との定量的関係を見出すことである。特に,高圧縮応力付与や多回数の繰返し付与に関しては,これまで試験的な検討が十分に行われておらず,急ぎ解明すべき課題である。そのために本研究では,低~高応力まで条件を拡張した応力強度比と付与回数に焦点を絞り,供試体の配合や強度は同等とし,以下(1)~3))を明らかにする。 1)応力強度比(低~高圧縮応力)と拡散係数の定量的関係(継続付与) 2)各応力強度比(低~高圧縮応力)の付与回数と拡散係数の定量的関係(繰返し付与) 3)各応力強度比の多回数(1000万回)までの付与回数と拡散係数の関係(繰返し付与) 令和4年度に着手した研究は,1)応力強度比(低~高圧縮応力)と拡散係数の定量的関係(継続付与)である。研究の目的は,拡散係数に対する圧縮応力(低~高応力)の継続付与の影響の調査である。具体的には,応力強度比=0.15,0.30,0.45,0.6の4条件と比較用に設定した応力強度比=0の1条件に対し,応力付与(30日間)後に継続付与した状態でのNaCl水溶液中への浸せき(JSCE G 572)(30日間)と,電位差滴定装置による塩化物イオンの濃度分析(JIS A 1154)を行った。表面から深部までの塩化物イオン濃度分布から拡散係数を算出した。試験より得られた成果は,拡散係数は弾性限度付近まで低下しその後傾きの正負が転じること,弾性限度を超えても弾性限度付近では塩分浸透抵抗性は高く応力強度比=0.50程度では無付与状態と同程度になることがわかった。その要因に応力強度比=0.30~0.40での微細ひび割れの発生と細孔直径=100nm~5μmの細孔容積の増加が関係していることがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間の計画として,令和4年度は1)圧縮応力(低~高応力)の継続付与が拡散係数に及ぼす影響を明らかにする研究,令和5,6年度は,2)圧縮応力(低~高応力)の繰返し付与が拡散係数に及ぼす影響を明らかにする研究,3)多回数(1000万回まで)の繰返し付与が拡散係数に及ぼす影響を明らかにする研究を推進する予定である。 令和4年度の実績として,1)圧縮応力(低~高応力)の継続付与が拡散係数に及ぼす影響を明らかにする研究を実施した。その結果,試験はトラブルが発生することなく計画通り順調に行うことができ,想定通りの良好で妥当な成果が得られた。具体的には,弾性限度内の応力付与は拡散係数に良好な影響を及ぼし,応力の増加に伴い拡散係数が低下し塩分浸透抵抗性が向上することがわかった。弾性限度を超えると応力の増加に伴い拡散係数が増加し塩分浸透抵抗性が低下することがわかった。また,研究計画に追加して,応力付与をするとなぜ拡散係数が変化するかに関し,その結果を裏付ける要因を調べる研究を実施した。試験は,応力付与後のコンクリートに対する水銀圧入ポロシメータによる細孔径分布の取得や3次元X線CTによる内部組織の観察などを行った。それによると,応力付与による拡散係数の変化を裏付ける要因として,内部組織の空隙の変化や微細ひび割れの発生があることがわかった。 これら結果は,圧縮応力付与が拡散係数にどのような変化を及ぼすのかを解明する大きな成果であり,低応力から高応力までのその定量的関係を現行予測式に適用することで高精度化を図ることができるため,非常に有意義な成果と捉えている。 以上より,現在の進捗状況は「おおむね順調に進展している」と判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
研究期間の計画として,令和4年度は1)圧縮応力(低~高応力)の継続付与が拡散係数に及ぼす影響を明らかにする研究,令和5,6年度は,2)圧縮応力(低~高応力)の繰返し付与が拡散係数に及ぼす影響を明らかにする研究,3)多回数(1000万回まで)の繰返し付与が拡散係数に及ぼす影響を明らかにする研究を推進する予定である。 令和5,6年度に実施する,2)圧縮応力(低~高応力)の繰返し付与が拡散係数に及ぼす影響を明らかにする研究,3)多回数(1000万回まで)の繰返し付与が拡散係数に及ぼす影響を明らかにする研究に関しては,応力付与方法が令和4年度の試験が静的付与であるのに対し,令和5,6年度の試験が繰り返し付与となる点で異なる。繰返し付与回数は,0回,100回,1万回,100万回,1000万回とし,付与応力は,令和5年度に応力強度比=0.15,0.30,令和6年度に応力強度比=0.45,0.60を実施する。なお,著者の既往研究において繰返し付与試験の実績があることから,試験の実施とその結果の取得に向けて,不測の事態が発生することなく良好な見通しが立っている。また,応力付与後の拡散係数の算出においても,令和4年度の研究と同一方法であり,問題の無く計画的に研究が進められる目途を得ている。 なお,繰返し応力付与のために用いる疲労試験機は,使用頻度が高く,使用期間が長くなることから,使用期間中の突発的な不具合の発生を防ぐため,試験開始前のメーカーによる点検と各部品,機器,油圧作動油等の消耗品の交換や整備を,繰返し付与を実施しない初年度(令和4年度)に無事実施済みである。 令和7年度は,令和4年~6年までの試験結果の取りまとめを行う。万が一,不測の事態で研究計画の遂行が停滞したり,試験条件の一部で再試験が必要になった場合でも,時間的余裕を見積もっており令和7年度に実施可能である。
|