研究課題/領域番号 |
22K04292
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
伊藤 睦 中部大学, 工学部, 教授 (00345927)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 付着モデル / 数値解析 / PC鋼材破断 |
研究実績の概要 |
本研究は,PC鋼材が腐食もしくは破断したプレストレストコンクリート部材の力学性能が予測可能な解析技術の開発を目的としたものである。特に,緊張力が導入されたPC鋼材の付着特性に着目し,PC鋼材破断時の部材内部の応力状態を適切に評価したうえで,部材の耐荷特性や剛性の評価を主眼としており,2022年度では,既往のPC鋼材を切断した実験の数値解析を実施して,PC鋼材破断時のPC鋼材とグラウト間の付着特性を評価する数値解析的検討とともに,導入緊張力を変化させたPC鋼材の切断試験ならびに両引き試験を実施した。その結果,以下の成果が得られた。 数値解析的検討では,グラウト強度を変数としたPC鋼材の切断実験で計測されたPC鋼材切断時のコンクリートひずみ分布などを評価するために,PC鋼材とグラウト間の付着挙動の評価に,島らにより提案された付着応力-すべり-鉄筋ひずみ関係を解析手法に導入した。その結果,今年度の検討範囲内では,切断に伴うPC鋼材のひずみ減少量が直線的に分布する領域では,PC鋼材とグラウト間の付着応力-すべり関係は位置によらず一定であり,最大付着応力はグラウト強度の2/3乗に比例することが明らかとなった。また,付着応力-すべり関係のEnvelopはバイリニア型となり,これは,マッシブなコンクリートに埋込まれた鉄筋の引抜き試験時に得られる関係と同様であり,付着応力-すべり-ひずみ関係に使用するひずみは,切断後のひずみ変化量とすることが妥当であることが明らかとなった。 実験的検討では,導入緊張量を変化させた試験体の鋼材切断試験および両引き試験を実施した結果,導入緊張量が鋼材破断時の両引き試験時の付着特性に影響を及ぼすことが確認された。しかしながら,定量的な評価には至っておらず,更なる検討を要する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標であったPC鋼材破断時の付着モデルの構築について,数値解析的検討より,モデル構築に対する方向性を得ることができた。その一方で,実験的検討では十分な結果が得られていないので,次年度に追加実験を実施する。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検討では,導入緊張量や鋼材種が付着特性に及ぼす影響を評価できていない。そこで,鋼材種を変数とした既往の切断実験について,2022年度と同様な検討を実施する。加えて,導入緊張力を変数としたPC鋼材の切断実験と両引き試験を追加実施するとともに,実験の数値解析を実施することで,導入緊張量がPC鋼材の付着特性に与える影響を明らかにすることを目指す。 また,設計荷重相当の荷重が作用したPC桁部材を対象に,PC鋼材の破断量や位置が桁のたわみや耐荷特性に及ぼす影響を数値解析的に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験治具の製作が当初の予定よりも安価に可能であったこと,コロナのため出張回数が減ったためである。次年度使用額を,2023年度の追加実験に使用する。
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