研究実績の概要 |
高炉水砕スラグは「水硬性」を有しているが,淡水環境では1年以上硬化しないと考えられている.しかし,実際に,現場で施工された水砕スラグの試験盛土は短期間で著しく硬化しており,室内試験結果とは大きく乖離していた.試験盛土造成時の飽和度は30%程度であるのに対して,今までの室内試験はそのほとんどが飽和状態で検討されており,実際の現場の飽和度を再現できていない.本研究は,不飽和状態における高炉水砕スラグの強度発現機構を解明し,水砕スラグを陸上工事の地盤材料として利用促進を図ろうとするものである. 令和4年度はアルカリ刺激剤として高炉スラグ微粉末を質量比で10%添加した水砕スラグの飽和および不飽和環境下における硬化挙動を確認した.飽和度は10, 20, 30, 50, 80, 100%に加えて浸漬させるケースを用意した.作製した水砕スラグ供試体に対して力学試験として一軸圧縮試験を,機器分析としてマイクロフォーカスX線CT撮影,熱重量示差熱分析を実施した.その結果,得られた一軸圧縮強さは飽和度によって傾向が大きく異なることが確認された.養生初期では飽和度が小さいものが高い強度を発揮する傾向にあるが,養生84日以降には飽和度が高い供試体についても硬化が進行することが示された.しかし,飽和度が低すぎると強度発現が進行せず,飽和度10%については養生14日以降,飽和度20%については養生56日以降の強度増加はほとんどみられなかった. 乾燥後の水砕スラグに対して実施したマイクロフォーカスX線CT撮影から水砕スラグ・水和物・間隙の3つに分類し,CT画像を3値化して示すことができた.その結果,飽和度が高い場合ほど水和物量が多く生成されていることが推定された.これは,熱重量示差熱分析や電子顕微鏡観察結果とも符合した.したがって,強度と水和物の生成量が必ずしも相関しないことが確認された.
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