研究課題/領域番号 |
22K04314
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
原 弘行 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (00588709)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 高炉水砕スラグ / 飽和度 / 強度 / 水和物 / 水和反応 / X線CT |
研究実績の概要 |
高炉水砕スラグは「水硬性」を有しているが,淡水環境では1年以上硬化しないと考えられている.しかし,実際に,現場で施工された水砕スラグの試験盛土は短期間で著しく硬化しており,室内試験結果とは大きく乖離していた.試験盛土造成時の飽和度は30%程度であるのに対して,今までの室内試験はそのほとんどが飽和状態で検討されており,実際の現場の飽和度を再現できていない.本研究は,不飽和状態における高炉水砕スラグの強度発現機構を解明し,水砕スラグを陸上工事の地盤材料として利用促進を図ろうとするものである. 申請書に記載していた「不飽和状態における硬化メカニズムの解明」は前年度に達成することができた.そこで,令和5年度は施工中の降雨の影響を検討するため,養生中に飽和度が上昇したときの硬化挙動を検討した.また,アルカリ刺激剤として添加する高炉スラグ微粉末を複数用意し,水砕スラグの硬化特性に及ぼすスラグ微粉末の性質について調べた.さらに,アルカリ刺激剤無添加の長期硬化挙動の検討も行った.その結果,水砕スラグの硬化挙動や水和物の生成状況は不飽和時点での硬化特性の影響を強く受け,飽和度の増加による影響は大きくないことが明らかとなった.したがって,施工時の初期の設定飽和度が極めて重要であることが示唆された.また,添加する高炉スラグ微粉末によって水砕スラグの硬化特性は異なっていた.このとき,強度発現するまでに長期間を要するほど,その後の強度増加率は大きくなる傾向があることが示された.これは,スラグ微粉末に含まれるマンガンや鉄の量に強く影響されることを明らかにした.スラグ微粉末無添加の場合,飽和度30%の供試体は養生455 日,飽和度50%の供試体は養生546 日時点で初めて強度発現が見られたが,それら以外の飽和度の供試体では一切強度発現しなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していた不飽和状態における硬化メカニズムの解明は前年度で概ね達成することができ,より詳細な水砕スラグの硬化特性やアルカリ刺激剤の影響まで検討することができている.
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度の研究成果から,施工時の飽和度が重要であり,その後の降雨の影響はほとんどうけないことが示唆された.そこで,より詳細な条件で実験を行って途中で飽和度が上昇したときの硬化挙動を検討する.また,スラグ微粉末のマンガンや鉄の含有量によって硬化挙動が大きく異なることが示された.これを利用して強度をコントロールすることを目的に,マンガン・鉄の含有量が硬化挙動に及ぼす影響を調べる.
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたソフトウェアの購入が不要になったことから59,354円の残額が生じた.翌年度の消耗品代として使用する予定である.
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